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07 May 2018
カナダの研究者らは、HIVから女性を守る膣インプラントを開発した。
Journal of Controlled Release誌に発表された論文で、彼らがどのようにして動物実験で膣プラントのテストに成功したか報告している。
AIDSを引き起こすウイルスであるHIVは、活性化された免疫T細胞に感染し、その組織を使ってライフサイクルを完了する。すなわち、HIVがコピーされ拡がっていく。おもな感染場所は女性生殖管である。
新しい膣プラントは薬剤をゆっくり放出し、T細胞をウイルスの生産性がはるかに低い静止もしくは「休止」状態に保つ。
活性化されたT細胞と違って、静止期のT細胞は、HIVのライフサイクルの初期段階を阻止し、「結果的に非効率な[感染]」となる。
一部のセックスワーカーはHIVに対して「生まれつき免疫」がある
University of Waterloo(カナダ)の薬学部教授で、シニア研究著者であるEmmanuel Ho氏らは、東アフリカのケニアでセックスワーカーの研究を行った後に、抗HIV膣インプラントのアイデアを考え出した。
彼らは、多くのセックスワーカーがHIV陽性の客と性行為をしてもHIV陽性にはならないことに気づいた。
さらなる研究により、女性のHIVに対する自然抵抗力は、免疫T細胞の休止状態が続いていることに由来することが明らかになった。
研究者らはこのことを確認したときに、女性生殖管内に薬剤を用いてT細胞の休止を誘導できないかと考えた。
このアプローチは「HIV[感染]に対する女性志向の素晴らしい戦略を提供」できると、研究者らは論文に記載した。
「経口投与される薬剤の一部は膣に届かない」ため、膣プラントの考えを前向きに検討することにしたとHo氏は述べた。
HIVを遮断できる膣インプラントによって、より安価で信頼性の高い感染予防法を提供できる可能性があると、彼は補足した。
インプラントは「免疫休止状態」を誘導する
世界には、HIV/AIDS患者が3,670万人、そのうち15歳以下の子供は210万人いる。
毎年新たにHIVと診断された16万人の子供たちの大部分は、サハラ以南のアフリカに住んでいる。彼らは、母親から妊娠中、出産時、授乳時にHIVウイルスに感染する。
インプラントは ゆっくりと分泌され、女性生殖管の壁に吸収される薬剤で満たされた多孔性の中空管である。中空管には移動することを防ぐ可とう性の2つのアームがついている。
本研究では、研究者らは、膣プラントにヒドロキシクロロキンを詰め、ウサギで実験した。
膣プラントにより、活性化したT細胞が有意に減少し、膣プラントが雌ウサギの生殖管において「免疫休止状態」を誘導することを示した。
「膣プラントがHIV感染予防の単独オプションとなるのか、あるいはほかの予防戦略と併用して最もよく使われるものになるのか、まだわからない」
「われわれは、今後の研究でこれらの質問に答えることを目指す」とHo氏は結論づけた。
https://www.medicalnewstoday.com/articles/321524.php
(2018年4月17日公開)