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16 Apr 2018
新研究により、エストロゲンが血糖値コントロールに役立つメカニズムを同定し、エストロゲン治療が閉経後の2型糖尿病予防に役立つ可能性が裏づけられた。
閉経後マウスとヒト細胞の研究において、研究者らはエストロゲンがグルコースに対する耐性を増加させるためにすい臓と胃腸における特定の細胞を標的とすることを発見した。
これは2型糖尿病のリスクをより低下させることに関連する。
研究リーダーであるJacques Philippe氏はスイスのUniversity of Geneva’s Faculty of Medicineの糖尿病専門医であり、同僚と共にJCI Insight誌に研究結果を発表した。
米国では約3,030万人または人口の約9.4%が糖尿病と推定される。糖尿病は、血糖値が異常に高くなる疾患である。
2型糖尿病は、体が血糖を制御するホルモンであるインスリンを非常に効果的に使おうとする時に起こるが、糖尿病症例の約90~95%を占める。
以前の研究では、閉経後、女性は2型糖尿病のリスクが高まる可能性が示された。これは、エストロゲン値の低下のような、ホルモンの変化が原因とされてきた。
そのような研究の結果として、研究者らはエストロゲン置換療法が閉経女性の間で2型糖尿病予防に役立つ可能性があるかどうかを調査し、多くの研究が肯定的な結果を生み出した。
そうは言っても、エストロゲンが2型糖尿病を防ぐ可能性の正確なメカニズムは今まで明らかになっていなかった。
エストロゲンはすい臓と腸細胞を標的とする
彼らの研究で、Philippe氏らはエストロゲンを閉経後マウスに投与した。
以前の研究は、主にエストロゲンがすい臓のインスリン産生細胞にどのように影響するかに焦点をあててきたが、この最新の研究では、血糖を増やすホルモンであるグルカゴンを産生する細胞にエストロゲンがどのように影響を与えるかも観察した。
「事実、もしすい臓がインスリンを分泌するなら、インスリンは糖を捕える一方で、グルカゴンは糖を放出するという反対の作用を持つホルモンであるグルカゴンも産生する。そのため、糖尿病は血中の血糖値をコントロールする2つのホルモンの間の不均衡が原因である」
新研究では、すい臓のα細胞、またはグルカゴンを分泌する細胞がエストロゲンに対して感受性が高いことを発見した;エストロゲンはそれらの細胞にグルカゴンをより少なく放出させるが、GLP1と呼ばれるホルモンより多い。
そして、とりわけ、GLP1も食後に腸によって放出される;GLP1はインスリン分泌を促し、グルカゴンの分泌を阻害し、満腹感を増加させる。
「事実、腸はL細胞と呼ばれる細胞のすみかとなる。L細胞はすい臓のα細胞と非常に似ており、その主な機能はGLP1を産生することは明白である」と、本研究の筆頭著者であり、Faculty of Medicine at the University of GenevaでもあるSandra Handgraaf氏は説明する。
「われわれは腸細胞においてGLP1産生が非常に増加したことを観察した。結果として、糖質バランスのコントロールにおける腸の重要な役割と問題となっている全体のメタボリズムにおけるエストロゲンの影響を証明した。
研究者らはヒト細胞株において彼らの知見を確認できた。
エストロゲン療法は恩恵をもたらす可能性がある
ホルモン置換療法は、心疾患リスクが高まるなど、閉経後の女性にとって多くの健康リスクに関係してきた。
「ホルモン療法を閉経後10年以上受ける場合、心疾患リスクは事実上増大する」とPhilippe氏は述べる。
しかしながら、閉経直後数年間のみエストロゲン置換療法を受けても心疾患リスクを上げるようには見えないとPhilippe氏は付加した。それは2型糖尿病のリスクの抑制に役立つ可能性がある。
「糖尿病との関連で、エストロゲン療法は、全症例において、女性の糖尿病症例の急増を防ぐ。これらの治療はうまく管理されれば、事実上、女性の健康にとって付加価値を与える可能性がある」
https://www.medicalnewstoday.com/articles/321421.php
(2018年4月6日公開)