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15 Dec 2017
アルコール依存症薬ジスルフィラムが抗がん特性を持つことが従来の研究で示されている。しかし今まで、研究者らはその薬剤ががんを標的とするメカニズムがわからなかった。新研究では、その薬剤を別の目的で使う道を開きつつ光を当てる。
Nature誌に発表された新研究では、一般のアルコール依存症薬ジスルフィラムががんを撃退するメカニズムと分子経路を明らかにする。
この研究は、コペンハーゲンのDanish Cancer Society Research CenterのJiri Bartek氏によって率いられた国際的研究チームによって実施された。
商品名Antabuseで知られるジスルフィラムは、慢性アルコール乱用を治療するために数十年間使われてきた。その薬剤は慢性アルコール依存症の治療法ではないが、アルコール乱用者にアルコールを飲みたくなくさせる。
従来の研究では、その薬剤がin vitro と in vivoの両方で抗がん活性を持つことが示された。しかし、Bartek氏らが論文の中で説明しているように、その薬剤ががんに逆らって活動するメカニズムと分子経路が不明であるため、未だがん治療のために再利用されることはなかった。
本研究の著者らが説明しているように、世界的な上昇するがんの発生とがん抵抗性に関わらず、多くの薬剤が失敗していることを考えると、すでに存在する薬剤の新しい可能性を同定することは重要である。
事実、WHOは、次の20年間で新しいがん症例数は70%増えるだろうと推測している。がんはすでに世界の2番目の死因である。
この状況下で、薬剤の再利用は安全、かつ費用対効果と時間対効果のある代用物である。新しい薬剤の検査は、高く、多大な時間を必要とするが、薬剤の再利用は関連する検査の多くがすでに行われた薬剤を使用する。
古くて安全な薬剤が世界中の命を救う
従って、Bartek氏らは、ジスルフィラムのがん特性の謎を明らかにすることを目指した。
まず、研究者らは、デンマーク人3,000名以上の全国的な疫学調査を実施した。調査では、ジスルフィラムを服用し続けたがん患者が服用を止めた患者に比べてがんで死亡する可能性が非常に低かったことを示した。
乳がん、大腸がん、そして前立腺がん患者はすべてジスルフィラムの効果の恩恵を受けた。
次に、研究者らはがん細胞のin vitro試験とマウスのin vivo試験を行い、その薬剤ががんを撃退できるようにするジスルフィラムの代謝体:いわゆるditiocarb-copper化合物を同定した。
研究者らは、この代謝体化合物が腫瘍の中でどのように蓄積するのかをさらに検出し、解析する方法も明らかにした。
最後に、そして重要なのは、研究者らは、このditiocarb-copper化合物ががん細胞を抑圧しようと作用する分子経路を発見した。
彼らは、「われわれの機能的かつ生物物理学的解析がp97 segregase のアダプターであるNPL4として、ジスルフィラムのがん抑制効果の分子標的を明らかにする。それは、細胞における 複合的に規制するストレス反応経路に含まれるタンパク質のターンオーバーにとって重要である」と書いている。
「われわれの結果がアルコール依存症薬ジスルフィラムの抗がん活性の説明に役に立つ」とBartek氏らは述べる。
「大局的見地から、われわれの研究は薬剤の再利用への多角的な取り組みの可能性の良い例となる」と彼らは付け加え、「新しい機構的洞察の提供、新しいがん関連ターゲットの同定、そしてさらなる臨床試験の奨励」
研究者らはこう結んだ。
「ジスルフィラムは、世界中のがん患者の命を救うために役立つ可能性のある、古くて安全、そして誰もが使える薬剤である」
https://www.medicalnewstoday.com/articles/320281.php(2017年12月7日公開)