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13 Nov 2017
研究者らは、健康な細胞を傷つけることなくがん細胞の自滅の引き金となる小分子を開発した。
Cancer Cell誌上で、米国のAlbert Einstein College of Medicineの研究者らは、急性骨髄性白血病(AML)細胞上でBAX Trigger Site Activator 1 (BTSA1)と呼ばれる分子をどのように検査したかについて説明した。
研究者らは、BTSA1は“AML細胞株と患者サンプルにおいて”、アポトーシスと呼ばれるある種の細胞自殺を“速やかに誘導する”と述べた。
アポトーシスは、体が機能不全や不要な細胞を排除する最も重要なプロセスである。例えば、胚芽が成長するとき、アポトーシスが過剰な組織を削減するのを手助けする。
いくつかの化学療法薬は、がん細胞のDNAにダメージを与えるときに間接的にアポトーシスを活性化する。
新しい抗がん療法の必要性
AMLのためのさらに効果的な治療の必要性は急務である。AMLは、米国では毎年1万人以上が死亡する白血病の一種である。そして、5年生存率は、数十年間約30%のままである。
本試験では特にAMLを取り上げているが、研究チームは、このアプローチが他の種類のがんにも有効である可能性があると考えている。
「われわれが開発している標的化合物は、直接がん細胞に自滅させる現在の抗ガン治療より効果的であることを証明すると期待する」と、上席著者で生化学と医学の准教授であるEvripidis Gavathiotis氏は説明する。
Gavathiotis氏は2008年に初めて、新分子が探し求める標的の構造と形態を説明したチームにいた。
「死刑執行人プロテイン」
新分子のターゲットは、BAXと呼ばれる細胞内の「死刑執行人プロテイン」上のあるサイトである。BAXプロテインは活性化すると、細胞のパワープラントに群がり、細胞を効果的に殺しながら、膜組織の中に穴をあける。
しかしながら、多くの場合、がん細胞はこの効果を回避して生き延びることができる。なぜなら、がん細胞は、それを活性化するBAX と分子を抑制するたくさんの「抗アポトーシスプロテイン」を作成するからである。
Gavathiotis氏らは、BAXサイトの最初の発見以来、アポトーシスに抵抗するために、がん細胞の能力を超えるような方法で死刑執行人プロテインを標的とする化合物を探してきた。
コンピューターを使用しながら、彼らは将来BAXサイトに結合する可能性のある何かを見つけるために100万以上の化合物を調べた。この努力が、約500の有望な候補物質を生み出した。研究者らは、それらの多くを自ら合成した。
研究チームは候補物質を評価し、BTSA1がBAXの最もパワフルな活性化因子であることを発見した。それは、「いくつかの異なるヒトAML細胞株に加えると、迅速かつ広範囲に及ぶアポトーシスを引き起こした」
彼らが、AMLの“ハイリスク”患者から採取した血液サンプルのBTSA1を検査した時、BTSA1が健康な血液生成幹細胞を傷つけることなくAML細胞におけるアポトーシスを標的とすることを発見した。
「毒性のサインはない」
研究チームは、その次に、ヒトAML細胞を動物に移植することによって作成したAMLマウスモデルにおけるBTSA1の効果を検査した。
彼らは、BTSA1で治療したマウス(55日)が非治療のコントロール群(40日)より かなり長く生存したことを発見した。事実、治療したマウスの43%が60日後もまだ生存しており、AMLの痕跡が全くなかった。
この研究の大きな成果は、治療したマウスには毒性の兆候が全く見られなかったことだった:BTSA1による治療は正常細胞と組織に危害を加えなかった。
Gavathiotis氏は、これはがん細胞においてアポトーシスが起こる寸前だからではないかと指摘した。彼らは、疾患のない人たちの正常な血液細胞と比較して、患者のAML細胞のBAX値がかなり高かったことも見出した。
「AML細胞で使用可能なより多くのBAXを使って、BAX値が低いか、全くない正常な細胞に危害を加えず、BTSA1がたとえ低くても、アポトーシス死を起こすために十分なBAXの活性化を引き起こすだろう」と彼は述べた。
次のステップは、他のがん種の動物モデルにおけるBTSA1の効果を調査することである。
「理想的には、われわれの化合物は、より速く、より効果的に、かつ標準化学療法の非常に多くみられる問題である有害事象がより少なく、がん細胞を死滅させるために他の治療と併用されるだろう。」
Evripidis Gavathiotis氏
https://www.medicalnewstoday.com/articles/319682.php(2017年10月9日公開)