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20 Jun 2017
男性約2,000名の臨床試験で、高リスク、進行性前立腺がんに対して、標準的初期治療レジメンにアビラテロン(Zytiga)を加えると、37%まで死亡の相対リスクが低下することが示された。
3年生存率は、標準治療のみの場合は76%だったが、標準治療にアビラテロンを加えた場合は83%だった。
これは、進行性前立腺がんの1次治療としてのアビラテロンの最大の試験である。
本研究は、ASCO (米国腫瘍学会)2017 で発表された。
「アビラテロンは寿命を延ばしただけでなく、70%まで再発の機会も低減した。そして、重篤な骨合併症の機会も50%まで抑制した」と、Queen Elizabeth Hospital (Birmingham, 英国)の教授で、筆頭著者であるNicholas James氏は述べた。「臨床的利点の大きさに基づき、進行性前立腺がんと新規に診断された患者の初期治療が変わるはずだと信じている」
テストステロンは前立腺がん細胞の増殖に拍車をかける。
アンドロゲン遮断療法(ADT)は、睾丸がテストステロンと他の同様のホルモン(アンドロゲン)を産生するのを抑制することで前立腺がんの増殖を遅らせる。
ADT にも関わらず、前立腺を含む、体の他の臓器は少量のテストステロンと他のアンドロゲンを産生し続ける。
アビラテロンは、他のホルモンをアンドロゲンに変換する酵素を標的とすることによって、体全体のテストステロンと他のアンドロゲン両方の産生を止める。
試験について
STAMPEDEは、英国とスイスで実施された進行中のマルチアームマルチステージ無作為化臨床試験である。
今回の解析は、ADTを開始していた高リスク前立腺がんの男性における標準治療と標準治療+アビラテロンとを比較した。
男性患者らは局所進行性がん、または転移性がんのどちらかであった。そして、全員が初めて長期の標準ADTを開始していた。
標準治療は少なくとも2年間のADTから成っていた;局所進行性がんの男性患者(全患者の48%)もADTに加えて放射線療法を受けられた。
臨床試験デザインへの新アプローチは、この比較が研究者主導のほとんどの試験よりもずっと早い患者の採用を意味した。そして、STAMPEDEは20年間にわたって、少なくとも10の比較検討からの無作為化データを報告するだろう。
重要な知見
40か月の平均追跡期間で、標準治療群では262、アビラテロン群では184の死亡例があった。
3年全生存率は、アビラテロン群では83%、標準治療群では76%であった。
アビラテロンは、標準治療に比べて71%まで治療の失敗の相対的危険性(スキャンや症状の悪化またはPSAの上昇によって測定された)を低減した。
効果は、本試験に登録した人たちの異なるサブグループにわたって一貫性があった。
全体としては、副作用は2群間で同様であった。
重篤な副作用は、標準治療群29%に比べて、アビラテロン群41%であり、アビラテロン群で多くみられた。
アビラテロン群でさらに頻繁に起きた主要な副作用は、高血圧のような心血管障害であった;肝障害もさらに多かった。
治療関連死亡例は、アビラテロン群2件、標準治療群1件であった。
次のステップ
3つの過去の臨床試験結果は、転移性前立腺がんの男性に対して、最初のADTに化学療法ドセタキセル(タキソテール)を加えると同様の効果があることを示唆した。
これらの2つの治療を組み合わせることで、患者が両方の薬剤から恩恵を受けるかどうかを確認するための研究が必要である。
今のところ、これはわからないが、研究者らはドセタキセルかアビラテロンを加えると、患者がさらに恩恵を受けるかどうかを確認するために、試験で採取された組織サンプルの分子解析を計画している。
試験のデータは、“network meta-analysis”のアプローチを利用しながら、
ドセタキセル、アビラテロン、そして他の治療を加えたアウトカムの間接比較にも寄与している。
「急激に成長するがんを持つ患者が、アビラテロンとドセタキセルの併用により効果を得る可能性があり、われわれはそれを裏づけるためのさらなる研究を必要とする」とJames氏は述べた。
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