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20 Jun 2017
腫瘍サンプルのゲノム検査は、個別化治療選択を可能にする。そこでは、標的治療が腫瘍における遺伝子変化に適合する。
なんらかのゲノム検査を受ける進行がんの患者数は増加しているが、包括的なゲノム検査は未だ日常的に実施される診療ではない。
フランスの1,944名の進行がん患者の研究では、幅広い、日常的なゲノム検査は、現在のところ、患者の一部にしか臨床的恩恵をもたらさないが、実施可能であることを示している。
著者らによれば、これはこの種の研究で最大のものである。
本研究は、ASCO(米国臨床腫瘍学会) 2017で発表された。
研究者らは、検査した腫瘍サンプルの52%において、わずかな実施可能な変更(“actionable” alteration)をみつけた。
実施可能な変更(“actionable” alteration)とは、理論上、標的治療に適合可能な遺伝子変化である。
分子腫瘍委員会は、676名の患者に標的治療を推奨した。そしてその内143名が推奨された治療を受けた。
5年生存率は、推奨された治療を受けなかった患者より、推奨された治療を受けた患者のほうが高かった(34.8% 対 28.1%)。
「本研究は、包括的なゲノムプロファイリングが、標的がん治療のための患者を選択するために日常診療で実施できることを裏づける」と、筆頭著者であるOlivier Tredan氏(Chair of the Department of Medical Oncology at the Centre Léon Bérard、フランス)は述べた。「そのテクノロジーは広く利用可能であり、少量のDNAしか必要ではない。理論上、フランスでどの患者に対してもこの検査をすることが可能であろう」
本研究について
ProfiLERは、進行がん患者のための治療法決定の一助になるべく、腫瘍のゲノムプロファイリングを使う、進行中の臨床試験である。
腫瘍サンプルからとったDNAは69種のがん関連遺伝子の次世代シークエンシングと全ゲノム比較ゲノムハイブリダイゼーションによって解析される。
著者らによれば、両方のテクノロジーはフランスでも世界のどこでも利用可能である。
エキスパート(分子腫瘍委員会)による学際的な委員会が、ゲノム検査結果を再検討するために毎週1回会合を開く。そして、作用し得る突然変異(actionable mutations)が発見された場合、分子標的治療のための助言を行う。
「われわれは、市販薬または早期臨床試験で検査された薬剤のどちらかを使って標的とされるpathwayにおける突然変異のあった患者に分子標的治療を推奨した」とTredan氏は述べた。
重要な知見
現在まで、本研究には2,676名の患者が登録し、サルコーマだけでなく、大腸がん、婦人科がん、乳がん、脳腫瘍、頭頚部がんを含む1,944の腫瘍が解析された。
作用し得る突然変異(actionable mutations)は、腫瘍サンプルの52%である1,004発見された;609名が1個だけ、394名が2個かそれ以上の変異を持っていた。最も一般的なactionable pathwayは、PI3K/mTOR pathwayであった。
676名(検査した1,944名中35%)の患者に、標的タンパク質か標的によって活性化したpathwayのどちらかを攻撃する薬剤の使用可能度に基づいて分子標的治療を推奨した。
当然ながら、143名は推奨した治療を受けた。その多くが一つの臨床試験への登録を通じてだった。
他の533名は、病弱やがんの進行が早い、臨床試験の資格基準に適さない、または未承認薬の入手が難しいため推奨した治療を受けられなかった。
研究者らは、ゲノム検査に基づいた標的治療を受けた患者143名と受けなかった患者502名の全生存率を比較した。
3年では、推奨した標的治療を受けた患者の53.7%が生存していた。受けなかった患者は46.1%であった。
5年生存率も、標的治療を受けた患者が高かった(34.8% 対 28.1%)。
次のステップ
研究者らは、最新の試験で使われた70遺伝子テストと市販の315遺伝子テストを比較する、新しい無作為化臨床試験ProfiLER 02を計画している。
その試験は、多くの遺伝子のスクリーニングが標的治療に対する更なる助言につながるかどうかを明らかにするはずである。
Watch the press conference here.
http://ecancer.org/news/11699-asco-2017–routine-genomic-testing-is-feasible–but-only-a-subset-of-patients-benefit.php
(2017年6月3日公開)