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25 May 2017
腸の粘液内層をマウスで実験したUniversity of Manchesterは、従来の便サンプルによる診断より12週早く、IBDの診断に繋がる可能性のあるバクテリアの変化を発見した。それは、人間におけるIBDの早期診断とよりよい疾患管理の可能性に繋がるだろう。
クローン病や潰瘍性結腸炎のようなIBDは重篤な痛み、体重減少、下痢を起こす慢性的な疾患である。そして、英国では、25万人以上に影響を及ぼしている。
診断は、多くの場合、患者に症状が出たときのみ下され、悪化すると、大抵は便中のバクテリアを変えてしまう。しかし、バクテリアの変化が炎症を起こすのか、炎症の結果としてバクテリアの変化が起きるのかどうかは明らかではない。
しかしながら、一般的に便サンプルでみられるバクテリアは、腸組織を守る粘液内層でみられるバクテリアとは異なるプロフィールがある。それが、大学の研究者らが実験したこの粘液層である。
本研究を率いたSheena Cruickshank氏は、「便サンプルは、腸内の別々の場所のコミュニティーに住む腸内微生物叢の複雑な状況を完全に再現していない。われわれは、胃腸の細胞のすぐ隣、そして問題が発症する場所の近くで発見された粘液サンプルを採取した。結果として、それらが便サンプルで検出されるより12週前に微生物叢における変化を見ることができた」
これらの疾患の原因は、複雑で、完全に理解されていない。しかし、遺伝的特徴、ライフスタイル、環境的要因、胃腸のバクテリアに対する反応における変化の組み合わせであると考えられている。
これらの変化は、免疫システムを標的とし、炎症を起こしながら、結果的に粘液層の薄層化とバクテリアが胃腸を満たす細胞である上皮組織にアクセスすることを招く可能性がある。
結果として、この疾患の早期のバクテリア研究が、胃腸における炎症をおこすバクテリアのバランスがどのように阻害されるかについてより深い洞察、さらに治療の進歩やスクリーニングの選択肢さえも提供してくれる可能性がある。
Cruickshank氏は、「胃腸内のバクテリアは通常慎重にバランスをとったシステムの中で生きており、これが消化に非常に役に立ち、われわれを健康に保っている。しかしながら、何らかの理由で、このバランスが阻害されることがある」と付け加えた。
「何がこのバランスを壊すのかをもっと早く知ることができること、そして関係しているバクテリアがわかることが、一部のこれらの痛みを伴う疾患の原因を理解し、患者によりよい支援をするために、さらに重要な機会をもたらすだろう」
‘Compositional changes in the gut mucus microbiota precede the onset of colitis-induced inflammation’は、 Inflammatory Bowel Disease誌に発表された。
本研究は、UK Biotechnology and Biological Sciences Research Council (BBSRC)の奨学金とEuropean Crohn’s and Colitis Organization (ECCO)の助成金の支援を受けた。
Article: Compositional Changes in the Gut Mucus Microbiota Precede the Onset of Colitis-Induced Inflammation, Maria Glymenaki; Gurdeep Singh; Andrew Brass; Geoffrey Warhurst; Andrew J McBain; Kathryn J Else; Sheena M Cruickshank, Inflammatory Bowel Disease, doi: 10.1097/MIB.0000000000001118, published 11 May 2017.
http://www.medicalnewstoday.com/releases/317482.php
(2017年5月16日公開)