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12 May 2017
研究者らがパーキンソン病によって破壊された脳細胞を交換する方法を発見したことで、われわれはパーキンソン病の治療法にさらに近づいた可能性がある。
Nature Biotechnology誌に発表された研究では、研究者らは、非神経脳細胞をどのようにドーパミンを産生する脳細胞に変えたのかを明らかにしている。
ドーパミンは、運動と調整にとって重要な脳部位である黒質と脳の他の領域にシグナルを送る神経伝達物質である。
パーキンソン病の人々の脳内では、ドーパミン産生細胞がダメージを受け、破壊されている。
これは、ドーパミンの減少につながり、これが、体の揺れとバランス障害を含むパーキンソン病の運動症状の原因となる。
研究者らは、パーキンソン病の人々の脳内にドーパミン産生細胞を置き換える方法を長い間研究してきた。
提案された戦略は、細胞移植であった。先駆的業績は、胎児の中脳組織から抽出されたドーパミンニューロンの移植を含んでいた。
「しかしながら、胎生組織の取得と標準化における難しさが、幹細胞や再プログラム化された細胞のような代替えの細胞源の研究につながった」とスウェーデンKarolinska Institutet 教授Ernest Arenas氏らの研究者チームは言及している。
グリア細胞を機能性ドーパミン細胞に変換する
Arenas氏らのチームは、細胞移植のために必要なものを取り除きながら、ある細胞型を他の細胞型に変換するプロセス細胞再プログラム化に焦点を当てた。
本研究のために、研究チームは、人間とマウスの脳内におけるニューロンを取り囲む星状膠細胞と呼ばれるグリア細胞をドーパミン細胞に変換することを目指 した。
研究者らは、ドーパミン細胞の独自性を形作ることにおいて、ある役割を果たす様々な遺伝子と、遺伝子発現を変えることで知られる小分子の転写因子を結合した。
研究チームは、転写因子と結合した時、人間星状膠細胞を人間のドーパミン産生細胞に非常に似ている細胞に変換する4つの遺伝子を同定した。
次に、研究チームは同じ結合体をパーキンソン病のマウスモデルに与えた。ネズミの星状膠細胞が機能性ドーパミン細胞に変換されただけでなく、マウスにパーキンソンの症状の抑制がみられた。
これらの結果をもとに、Arenas氏らは、遺伝子と小分子の結合体を使った細胞の再プログラム化が、パーキンソン病の効果的な治療戦略となる可能性があると信じている。
これらの結果が、数百万人が待っている治療につながる可能性がある
Parkinson’s UK で研究の次長を務めるDavid Dexter氏は、この研究チームの結果を“きわめて将来有望”であると歓迎する。
「しかしながら、このプロセスを通して造られた新細胞の位置によって、脳へのドーパミン供給のコントロールを難しくする可能性がある」と述べる。
「現在、このテクニックのさらなる進歩が必要とされる。つまり、ドーパミンが元の脳細胞のように制御された方法で産生され、かつ放出されるよう促すことである。もし成功すれば、このアプロ―チがパーキンソン病の人々の生活を改善する実行可能な治療に変わるだろう。そして、最終的には数百万人が待っている治療につながる可能性がある」David Dexter氏より
http://www.medicalnewstoday.com/articles/316896.php
(2017年4月11日公開)