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30 Jun 2016
無作為化第III相臨床試験MA.17Rにおいて、レトロゾールにおけるアロマターゼ阻害剤(AI= aromatase inhibitor)治療を5年から10年への延長した場合、早期乳がんの閉経後患者に有効であることが示された。
AIの5年間とある一定期間のタモキシフェン先行治療後に、レトロゾールを5年間受投与した患者は、再発率がプラセボと比べ34%低下した。
本試験はNational Clinical Trials Networkから参加したthe Canadian Cancer Trials Groupが主体となり実施された。
本結果は、ASCOのアブストラクト5,000本以上から選ばれた、患者ケアに最も影響を与える可能性があると考えられるPlenary Session4本内の発表である。
「初期ホルモン受容体陽性乳がんは、再発リスクが不確定である」と、マサチューセッツ州ボストンのMassachusetts General Hospital, Breast Cancer Researchの責任者で、Harvard Medical Schoolの医学部教授である筆頭著者のPaul Goss氏(MD, FRCP, PhD)は述べた。「本研究は、アロマターゼ阻害剤による治療延長が乳がん再発を低減する可能性を証明し、多くの患者とその医師らへ治療の方向性を提供した。さらに、長期AI治療は大幅な乳がん予防効果を示した」
両群間で、MA.17Rによる全生存率に有意差はなかったが、ホルモン受容体陽性乳がんの慢性再発の性質のため、全生存率を臨床試験で実証するのは困難であることを証明したと、Goss氏は述べた。
そのため、乳がんにおける多くの内分泌療法は、無病生存率の改善のみに基づいた規制当局の承認を得たものである。
患者の全体的なQOLは、両群間で同等であった。
プラセボに有利とされるわずかな物理的な機能の差異が認められたが、これらは、臨床的に有意であると見なされなかった。
「早期乳がん患者の大半は、長期生存者である。ホルモン療法は長期間にわたるため、患者がどう感じるかが非常に重要である」と、カナダ、Centre hospitalier universitaire de Québec の研究者で、MA.17Rにおける患者の医療効果評価の分析を行った筆頭著者、Julie Lemieux氏(MD)は述べる。
研究デザイン
MA.17R臨床試験に関連するアブストラクト2本からのデータが、安全性と有効性について(LBA1 – Plenary)と、患者のQOLに関する報告第2回目(LBA506)として、ASCOにて発表された。
本試験では、初回治療として5年のAI治療を受けた、もしくは、ある一定期間のタモキシフェン先行治療後に5年のAI治療を受けた、といった3パターンのAI治療を受けた、閉経後女性1,918名が登録された。
AI治療完了後2年以内の患者が登録されたが、AI治療完了の6か月以内に、約90%がレトロゾールまたはプラセボを処方し始めた。
患者のQOL報告書では、身体の健康と精神衛生のさまざまな領域に関する標準質問票:SF-36、そして閉経期に特有のアンケート:MENQOLが使用された。
参加者1,918名のうち、1,428名は初期QOL評価を完全に満たしていた。
これらは、12か月、24が月、36か月、48か月、60か月の時点で行われ、85%以上の患者が追跡調査において質問票に回答した。
研究結果
Impact on Risk of Recurrence and New Breast Cancer (LBA1 – Plenary):レトロゾール延長群は乳がん再発リスクが34%減少した。
対側の乳がん年間発生率は、レトロゾール群(0.21%)がプラセボ群(0.49%)に比べて低く、乳がん予防効果を示した。
5年のフォローアップにおいて、レトロゾール群95%、プラセボ群91%の割合で乳がんが治癒した。
5年全生存率において、プラセボ群93%、レトロゾール94%であり、統計的な有意差は見られなかった。
Quality of Life Findings (LBA506):最終的に、全体的なQOL、またはレトロゾール5年処方またはプラセボ処方の閉経後患者におけるQOLとでは、統計的な有意差は見られなかった。
プラセボに有利とされるわずかな物理的な機能の差異が認められたが、これらは 臨床的に優位であると見なされるものではなかった。
2012年には、世界中の女性600万人以上が、乳がん診断後に少なくとも5年の生存率を有した。これらの大多数は、エストロゲン受容体陽性乳がんであり、本知見が有効である可能性がある。
http://ecancer.org/news/9532
(2016年6月5日公開)