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27 Jun 2016
2015年10月に始まった革新的なプロジェクトは、転移性乳がんゲノミクス研究の促進に役立つ可能性があり、新しい治療開発の情報を提供する。
開始以来7か月において、2,000名を超える患者が、本調査研究に登録された。本研究デザインは、進行性乳がん患者による健康記録(カルテ)、腫瘍標本、唾液サンプルを収集し、分析するといった内容である。
本研究は、記者会見でとりあげられ、ASCO2016で発表された。
「米国では、腫瘍サンプルの研究を実施するセンターで治療を受けるのは、転移性がんを有する男女合わせて150,000名中のごく一部のみである」と、ボストン、Dana-Farber Cancer Instituteの腫瘍内科医、また、マサチューセッツ、Broad Institute in Cambridgeの準会員で、本研究筆頭著者であるNikhil Wagle氏は述べた。
「この新たなアプローチにより、患者が直接研究へ参加できるようになり、われわれが進行性乳がん全患者の転帰の改善に貢献することを願う」
研究デザイン
本プロジェクトは、Broad Institute of MITとDana-Farber Cancer Instituteにより開始された。研究者らは、患者と患者擁護団体の協力を得て、世界中の乳がん患者が参加可能なウェブサイト(mbcproject.org)を立ち上げた。
研究者らは、ソーシャルメディア、ニュースレター、ブログ、支援運動などの各種チャンネルを使用し、患者がかかっている個々の医師や組織を通してではなく、患者を直接募集することができた。
この進行中の研究に登録する際、患者らは、がん既往歴とその治療に関する質問に答える。
そして、患者らは参加に同意することが求められる。このステップを経て、研究者らは患者カルテを入手し、患者らの腫瘍サンプルの一部を収集する。
患者らは、また、自宅用キットにて収集した唾液サンプルを提供することが求められる。
これまでに登録された患者の95%より、彼らのがんと治療、およびその経験に関する詳細な情報が提供された。
1,100名以上は、カルテのコピーを収集し、腫瘍と唾液標本の次世代シーケンシング技術を実施することに同意した。
すでに400名を超える唾液サンプルが、Broad Instituteに送られてきている。
Metastatic Breast Cancer Projectの包括的な目的は、死に至る疾患のより良い治療開発ための情報を提供することである。
研究者は、何千もの人々によるカルテとゲノム情報からの洞察が、本当に必要であった、従来のアプローチと同じ試練を受けてきた患者群(長期間で異常な治療を受けた患者、初期診断において転移性疾患を有する患者、若くして診断を受けた患者、少数派の人種/民族の患者)に対する初期の目標である、進行性乳がんの生物学的な洞察を生み出すことを願う。
これらの各カテゴリーにおける患者らは、すでに研究に登録していた。
これらの複数の特異な患者群は、標的治療と従来の化学療法の両方を含む特異的治療に、著しい効果を示す多くの患者から成る。
今後の展望
研究者は、現在、収集された唾液と組織サンプルの次世代シーケンシング調査を実施している。
来月7月には、研究者らは、プロジェクトの構成要素“血液生検”のパイロットデータを含めた患者のゲノムデータの収集方法を発表する。それゆえ、研究者らは、患者による循環腫瘍DNA細胞を研究し、治療に対する耐性のメカニズムや治療中の転移性乳がんの革命といった、細胞組織のみを分析しても回答が得られない研究のさらなる洞察を行う。
さらに、本プロジェクトでは、プロジェクトで生じた非同定の臨床データおよびゲノム・データを、最近開発されたデータ共有プラットフォーム、そして、National Institutes of Healthによる既存データ共有プラットフォームを使用し、広く共有する。
「もし快く患者らが、彼らのサンプル・既往歴・データをMBC projectに共有してくれたら、われわれは収集し生成したデータを取り込み、研究を加速するための研究団体に共有する責任がある」と、Wagle氏は述べる。「次の段階を担うのはわれわれではない。われわれは他の研究者らが実施し、われわれと成功結果を共有することを望む」
研究者らは、近い将来、他のがんにおける、類似の患者パートナーシップ構想を開催する計画である。
http://ecancer.org/news/9527
(2016年6月4日公開)