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07 Jun 2016
完全摘出手術を行った進行性卵巣がん患者に対し、静脈内(IV=intravenously)と腹部(腹腔内 / IP=intraperitoneal)の両方へ化学療法を行うことは、IVへのみ化学療法を行うよりも効果的であることが示された。
最初に、術前に化学療法で治療(ネオアジュバント療法など)した女性において、9か月の時点で疾患が進行していたのは、IPとIVへ化学療法を行った患者が23.3%に対し、IVのみ化学療法を行った患者が42.2%であったことが、無作為化第Ⅱ相試験の初期成果より示された。
本研究は、記者会見でとりあげられ、ASCO 2016で発表された。
著者らによると、術前にネオアジュバント療法を受ける卵巣がん患者の割合が増えている。
米国と欧州では、上皮性卵巣がん全患者の約30~40%が、ネオアジュバント化学療法を受けると推定される。
このアプローチより、最適な腫瘍減量手術(debulking surgery)を受ける女性は、IP / IV併用化学療法の候補である可能性がある。
他の部分に生じる副作用はあるものの、IP化学療法は、腫瘍に対する化学療法剤の高投与を可能にする。
一部の先行ランダム化臨床試験では、IP化学療法は卵巣がん患者の転帰を改善することが示さた。
しかしながら、これは、ネオアジュバント(術前)化学療法を受けた患者においてIP化学療法の利点を調査した最初の無作為化試験である。
「この早い段階で、われわれは、毒性の有意差なしに、IP化学療法が有効であることがわかった」と、カナダ、トロントのSunnybrook Odette Cancer Centre、Medical Oncology and Hematology部長で筆頭著者のHelen Mackay氏は述べた。
「しかしながら、患者は、医師とこれらの選択肢について検討する際、IP / IV化学療法の副作用とともに、がん手術からの回復について考えるべきである」
研究デザイン
この無作為化第Ⅱ相試験は、ステージⅡB-Ⅳの上皮性卵巣がんにおける2剤併用化学療法レジメンの有効性と副作用を比較した。
女性の大多数(82%)は、ステージⅢC疾患(腹腔へのがんの拡散)を有していた。
本研究では、275名が卵巣がんの除去手術(腫瘍減量術;debulkingとも呼ばれる)に続き、ネオアジュバントプラチナベース化学療法を受けた。
減量手術後、200名をランダムに、IVによる治療、またはIV/IPレジメンに割り当てた。
研究結果
9か月の時点で疾患が進行していたのは、IP/IV化学療法を行った患者が23.3%に対し、IVのみ化学療法を行った患者が42.2%であった。
無増悪生存期間の中央値は、両群間で同等で、IV化学療法11.3か月、IV / IPレジメン12.5か月であった。
全生存期間の中央値は、IV / IP療法(59.3か月)のほうが単独IV療法(38.1か月)よりも期間が長かったが、その差に統計的有意差はなかった。
「この無作為化第Ⅱ相試験は、統計的に生存率を評価する内容が入っていなかったが、本研究結果は、患者がネオアジュバント化学療法後に、腫瘍減量術を受ける際に、IP化学療法を組み込む方法に関する情報を提供する」と、Mackay氏は述べた。
「本研究結果は、初期の最適な減量手術後にIP化学療法を受けた場合の、全生存率の改善を示した過去のアジュバント無作為化試験に対する付加的な情報を提供する」
重篤な副作用の割合は、IP / IV化学療法では単独よりもやや低かったが(16%対23%)、この差は統計的に有意ではなかった。
今後の展望
先行研究では、卵巣がんにおける一部の分子サブタイプが、他のサブタイプよりも、化学療法に対して感受性が高いことが示されている。
研究者らは、この研究期間に採取した組織サンプルを評価し、特定の生物学的特性がIP化学療法とIV化学療法の転帰改善に関連していたかを確認する予定である。
「われわれが、長期生存者の同定が可能であれば、この新たなアプローチを本当に必要とする患者に対し、制度の高い予測を行うのに役立つ」と、Mackay氏は述べた。
卵巣がんについて
2012年には世界において239,000名が卵巣がんと診断され、今年、米国では122,280名が新たに卵巣がんと診断されると予想される。
スクリーニングをしない、または特異的症状のために、ほとんどの女性は、すでに診断時に末期である。
上皮性卵巣がんは、米国の婦人科がんにおけるおもな死亡原因であり、2016年の当がん死亡予測数は推定14,240人である。
http://ecancer.org/news/9528
(2016年6月3日公開)