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06 Jun 2016
第1染色体と第19染色体の同時欠失(1p/19q co-deletion)がない退形成神経膠腫(anaplastic glioma)に、アジュバント化学療法が有効であることが、ヨーロッパの第Ⅲ相試験における初期結果より示された。
推定5年生存率は、放射線治療後のテモゾロミドアジュバント療法で56%、放射線治療単独(テモゾロミドアジュバント療法なし)で44%であった。
テモゾロミドアジュバント療法を追加することで、疾患進行はさらに2年以上遅延した。
本研究は、記者会見でとりあげられ、ASCO 2016で発表された。
「これまで医師らには、グレードⅢの退形成神経膠腫のテモゾロミドアジュバント療法を裏付ける証拠がなかった」と、オランダ、ロッテルダム、Erasmus MC Cancer Centerの神経腫瘍学教授で本研究筆頭著者であるMartin J. van den Bent氏は述べた。
「この発見により、患者の治療選択肢が増え、このまれな形態の脳腫瘍治療の方法が変更されるべきである」
研究デザイン
第1染色体と第19染色体腕の欠失は、脳腫瘍の特異種において起こる。
この遺伝子異常を有する患者には、化学療法が奏効し、生存率が延長する傾向がある。
“Concurrent and Adjuvant Temozolomide Chemotherapy in Non-1p/19q Deleted Anaplastic Glioma(CATNON)”第Ⅲ相試験は、第1染色体と第19染色体の同時欠失のない患者に制限された(別の試験ではこのマーカーを有する患者が対象)。
研究者らは748例を4種の投与群に無作為に割り当てた:
・放射線治療単独
・放射線治療期間中にテモゾロミド化学療法
・放射線治療期間中および治療後にテモゾロミド化学療法
・放射線治療後のテモゾロミド化学療法(アジュバント療法)
本研究は、European Organisation for Research and Treatment of Cancer (EORTC)と、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアの118の組織に登録された被験者により実施された。
研究結果
放射線治療とテモゾロミド治療の併用後、または放射線治療後にテモゾロミド治療を行った群は、アジュバント療法なし群に比べ、疾患進行が遅延した。
疾患進行の中央値は、テモゾロミドアジュバント療法群(42.8か月)は、なし群(19か月)に対して2倍であった。
テモゾロミドアジュバント療法群は、生存期間中央値に達しなかった。
長期生存推定値は、テモゾロミドアジュバント療法を後押しする。5年目における生存率は、テモゾロミドアジュバント療法群が56%、放射線治療単独群または放射線治療期間中にテモゾロミド投与群が44%であった。
放射線治療期間中にのみテモゾロミド治療を受けた場合の結果はまだであり、この研究の最終データは2020年に得られる予定である。
テモゾロミドは経口薬であり、一般的に患者に受け入れられやすい。
テモゾロミド試験群の最も一般的な毒性は、主に血液関連で(低血小板と低白血球など)、5-10%の割合で重篤な毒性をもたらす。
今後の展望
今後の研究では、最もテモゾロミドアジュバント療法が有効な患者の同定に焦点をあてる。
研究者らは、このがんにおいて予後に影響を及ぼすと知られている付加的な遺伝子の異常、O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子プロモーターのDNAメチル化(MGMT promotor methylation)とIDH遺伝子の突然変異について、評価または再検査する
http://ecancer.org/news/9541
(2016年6月3日公開)