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27 May 2016
ヒトの軟部組織肉腫(STS=Soft Tissue Sarcoma)細胞系のエリブリンによる前臨床試験の結果より、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫内の抗増殖作用が示され、平滑筋肉腫モデルにおいて腫瘍の血液供給を改善することが、AACR2016にて報告された。
この薬剤は、特定の軟部組織肉腫で腫瘍転移のリスクを低下させる可能性がある。
「これらのデータは、軟部組織肉腫モデルのエリブリンメシル酸塩による細胞分裂阻止作用と複雑な非有糸分裂作用を立証する。エリブリンは、インビトロ(in vitro) およびインビボ(in vivo)にて、抗増殖作用を示し、STS細胞分化を生じる可能性がある。また、腫瘍血管系の再構成により生じる可能性がある血管灌流の改善も示された。この改善が、STSにおける腫瘍転移率を低下させる可能性がある」と、Eisai、Senior DirectorのJunji Matsui氏が述べた。
本研究では、STS細胞系3種の形態学的変化、STS細胞系2種の遺伝子発現分析、STS細胞系1種の血液灌流が調査された。
血液灌流のデータより、エリブリンは腫瘍血管系の再構成を引き起こす可能性があり、酸素環境をもたらすことが示された。
がん細胞は脱酸素化(低酸素)環境で増殖するため、腫瘍灌流の改善は腫瘍転移率の低下につながる可能性がある。
AACRで報告されたデータは、エリブリンの作用モデルの提唱と合致しており、STSで転移率を低下させる際に、エリブリンの役割に対するさらなる洞察を提供する。
軟部組織肉腫を有する50%は余命5年である。欧州では毎年29,000名が軟部組織肉腫と診断を受け、それは全がん診断のおおよそ1%にあたる。
2016年4月、European Medicines Agency’s Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP)は、以前アントラサイクリン系レジメンを受けていた成人の切除不能な局所進行性脂肪肉腫(adipocytic sarcomas)治療に対し、エリブリンに関する肯定的意見を採択した。
2016年1月、Food and Drug Administration (FDA)は、アントラサイクリン系レジメン前療法の切除不能または転移性脂肪肉腫の治療として、エリブリンを承認した。
ライセンスは、2016年2月に日本で付与され、エリブリンの軟部組織肉腫治療が適用追加された。
http://ecancer.org/news/9136
(2016年4月17日公開)