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18 May 2016
健常な人の歯周病に関連する2種の細菌は、後の膵がん発症リスクを増加させることが、AACR2016にて発表された。
「先行研究では、歯周病と欠損歯といった口腔障害の指標は、膵がんリスクの増加に関連することが示されていた」と、 New YorkのNYU Langone Medical Center、Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center公衆衛生部部長の准教授 Jiyoung Ahn氏は述べた。
「この相関性が、歯周病に関連する口腔細菌によって引き起こることを検査するため、これらの細菌が膵がんリスクと相関するかについて、初めに測定する必要があった」
「われわれは、歯周病に関連する2つの細菌、Porphyromonas gingivalisとアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス (Aggregatibacter actinomycetemcomitans)が、膵がんリスクを50%増加させることを発見した。これらの研究データより因果関係は示されなかったが、膵がんの潜在的危険因子を理解するための最初の一歩であり、この因子は将来膵臓がん予防と早期発見のための新しいアプローチを開発するために不可欠である。
Ahn研究室の大学院生であるXiaozhou Fan氏とその同僚らは、Cancer Prevention Study IIとProstate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial cohortsによる検体ならびにデータを用いてコホート内症例対照研究を行った。
両コホートで健常者が登録され、長期間の追跡調査により、がんの発現を含めたさまざまな結果を得た。
研究者らは、後に膵がんを発症した症例群361名分と、対照群(matched control)371名より収集した口洗浄サンプルを調査した。
彼らは、各サンプルにおける菌種のプロファイルを生成するためにゲノム技術を用いて、 ロジスティック回帰分析を行い、個々の菌種と膵がんリスク間の相関性、他の危険因子の制御、年齢、喫煙状態、そして肥満度指数を調査した。
経口洗浄サンプル内のP. gingivalis(Porphyromonas gingivalis / ポルフィロモナスジンジバリス)は、59%の膵がんリスク増加と相関した。そしてA. actinomycetemcomitans (Aggregatibacter actinomycetemcomitans / アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス)は、119%のリスク増加と相関した。
リスク率は、2年間の経口洗浄サンプル収集のうち、膵がんを発症した群のサンプルを除いても変わらなかった。Ahn氏によると、この事実により、研究チームは相関について確信した。
「米国では約1.5%の男性と女性が、ある時点で膵がん診断とされる。しかしながら、診断後、5年以上生存するのはたったの5%である。膵がん予防の新たなアプローチと早期発見が早急に必要である。われわれの新たな発見がそういったアプローチに直接還元されないかもしれないが、さらなる研究でこの研究が立証されたら、この疾患を検査する新しい方法を示すことができる。そして、相関には因果関係があるとわかれば、潜在的な予防のアプローチを示すことができる」と、Ahn氏は述べた。
Ahn氏によると、本研究の最大の欠点は、調査対象の集団が多様でなかったことである。主に非ヒスパニック系の白人で、健常人であった。したがって、結果がすべての人種にとって、一般的であるとは言えないかもしれない。
http://ecancer.org/news/9081
(2016年4月19日公開)