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16 Nov 2015
米国では、成人735,000人が悪玉コレステロール値が高いといわれているが、3人に1人が管理できていないとされている。新研究では、現在のコレステロール治療に対し、安くてさらに効果的な選択肢を提供可能なワクチンの開発を公開した。
Vaccine誌に発表された研究の共著者Bryce Chackerian氏 (Department of Molecular Genetics and Microbiology at the University of New Mexico)と研究チームは、新ワクチンがマウスとアカゲザルの両方で、どのようにLDLコレステロールを有意に下げたかを明らかにしている。
LDLコレステロールは一般的に悪玉コレステロールとして称される;高LDLコレステロールは、米国における主な死因である、心臓発作、脳卒中のリスクを上昇させながら、動脈の中にプラークの蓄積を引き起こす。
CDCによれば、高LDLコレステロールの人々は標準レベルの人々より心疾患を発症する可能性が2倍である。
健康食を身につけ、身体活動を増やすなどのように、ライフスタイルの変化が標準コレステロールのレベルを維持するためのカギである一方で、多くの人々がLDLコレステロールを下げるためにスタチンを飲んでいる。スタチンは、コレステロールを産生するために肝臓が必要とする酵素を阻害することで作用する。
スタチンは効果的であるが、誰にでも効果があるわけではない、また筋肉痛、肝臓障害、消化器の異常、糖尿病のリスクの増加を含む重度の副作用を起こす可能性があると、Chackerian氏らは述べた。
しかし、このワクチンは、PCSK9 (proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)と呼ばれる血液中のコレステロール調整タンパクを阻害することによって作用するが、スタチンに対してさらなる効果的な選択肢となる可能性があると研究チームは述べた。
ワクチンが、世界中の健康に重要なインパクトを与える可能性がある
本研究によれば、研究者らは、PCSK9に対して強い抗体反応を産み出す、ウイルス様粒子バクテリオファージワクチンを製造した。
PCSK9は血液中のLDLコレステロール受容体と結合することで作用する。肝臓では、LDL受容体が効果的に血液中からLDLコレステロールを除去するが、PCSK9がLDL受容体に結合するとき、LDL受容体はもはやこの能力はない。新ワクチンのよってPCSK9を阻害すれば、、LDL受容体がきちんと働くことが可能になる。
コレステロールの真実
・ 米国では、高コレステロールの成人の半数以下しかコレステロールの治療を受けていない
・ しかしながら、高LDLコレステロールの治療を受けているアメリカ人の割合は、1999-2002年では28.4%のみだったが、2005-08年では48.1%に増加した。
・ すべての成人が5年ごとにコレステロールのチェックを受けるべきである。
4~6週のマウスのワクチン単回投与のテストでは、LDLコレステロール値が有意に下がった。スタチンとの併用では、9から17歳のアカゲザルにおいては、ワクチンによりLDLコレステロールがさらに下がった。研究者らによれば、その知見は、ワクチンが人間でもコレステロールを下げる可能性があることを示している。
「この新ワクチンに関して最も素晴らしいことの一つは、スタチン単独よりはるかに効果的であるようにみえることである」とChackerian氏は指摘している。
新ワクチンは、PCSK9を標的にした初めてのコレステロール降下治療ではない。8月に、米国のFDAが、PCSK9を阻害し、LDLコレステロールを下げるモノクローナル抗体を使用するevolocumab (商品名Repatha) と呼ばれる薬剤を承認した。
FDAは、LDLコレステロールのさらなる低下を必要とする心臓発作や心疾患の患者と同様に、高コレステロールの遺伝性素因のある成人のために、健康的な食事と最大耐性スタチン治療とともに使用されるためにその薬剤を承認した。
しかしながら、Chackerian氏らは、このワクチンがそのような治療よりさらに効果的であるだけでなく、モノクローナル抗体による治療が年に10,000ドル以上費用がかかることに言及しつつ、かなり安価な代替手段になりうると確信している。
「先進国ではこれらのコストを維持できるかもしれないが、発展途上国では、費用がそのような薬剤の使用に対する大きな障害となりえる」と著者らは述べた。「反対に、様々な重大な感染性・伝染性の疾患に対するワクチン療法は、先進国や発展途上国で適合することが示されてきた」
総合的研究結果に対する研究者のコメント:
「ここで報告されたマウスとアカゲザルにおけるデータは、PCSK9を標的とするワクチンが脂質レベルを効率的に下げ、スタチンと相乗的に作用する可能性があるという、原則の証明エビデンスを提供している。
従って、PCSK9ペプチドを標的とするVLPを基盤としたワクチンの使用が、他の治療に対する費用対効果のある代替え品として役に立つ可能性があり、高コレステロール血症と心血管疾患を管理するための広く適用可能なアプローチにつながる可能性がある。成功すれば、このアプローチが、明らかに世界中の人間の健康に重大な影響をもたらす可能性がある」
研究者らは、アカゲザルでのワクチンのさらなるテストを計画している。そして提携企業と協力してワクチン開発を進めたいとしている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/302458.php
(2015年11月11日公開)