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ecancer : 血液  : ESMO 2015 : 社会的な貧困と性別は、小児および若年成人のホジキンリンパ腫発症率に影響する

09 Oct 2015

過密状態の生活により、リンパ球(白血球)由来のがんであるホジキンリンパ腫(HL)の特定種の発症が、小児および若年成人において抑制される。

「この抑制効果は、早期の感染が、将来における感染とがん細胞を有効に対処する免疫系を促進する可能性があることを示す」と、本発見を見出した英国の研究者が述べた。

本研究結果について、英国、ニューカッスル、Newcastle UniversityのInstitute of Health and Societ疫学講師であるRichard McNally氏が、ECC 2015にて発表した。HLの原因は現時点では明らかでない。

この問題について、研究者らは、Northern Region Young Persons’ Malignant Disease Registryに登録された0~24歳のHL患者621例を分析した。

「小児リンパ腫は、男性によく見られるが、性別による分析はあまり行われていない。さらに、HLにおける男女比は年齢に応じて変化する。そのため、われわれは年齢と同時に、社会経済貧困のような他の因子も考慮することにした」と、McNally氏は述べた。

HL発症ピークは、青年期と55歳以上であった。

5年生存率は全体の約85%であった。

そして、0~24歳グループでは、93%であった。

研究者らは、対象患者において、5つの異なるHLサブタイプを発見した。
・結節性硬化症(NS = nodular sclerosis)型247例:腫瘍小結節が大きい。
・混合細胞型105例:炎症細胞の異なる型の混合物が含まれる。
・リンパ球豊富型58例、最善の転帰のサブタイプ
・その他68例
・不特定(NOS = not otherwise specified)143例

全体としては、女性に比べて男性のほうがHLを有していたが、男女比は年齢層とサブタイプの両要因によって変化した。

NSサブタイプは、男性130名と女性117名であったが、20~24歳だと、男性55名と女性72名で、男女比が逆転する。

Townsend deprivation scoreの4項目「家が狭い・持家でない・失業・車がない」から貧困の度合いを算出した。

研究者らは、より過密な生活環境である地域に住む患者のうち、HLのNSサブタイプの発症率が低下することがわかった。過密レベルが5%増加すると、このサブタイプの発症数が半減する。

しかし、NOSグループでは逆に、過密な生活環境においてHLの発症率が上昇することがわかった。貧困による混合細胞型とリンパ球豊富型のサブタイプの発症率の影響はないようである。

「NSサブタイプに関するわれわれの調査結果より、過密な環境で生活している小児にうつる感染症は、小児の免疫系を直接刺激することが示唆され、それゆえに、小児期と若年成人期の後半に起こるこの種のがん発症を防止する可能性がある。HLの遺伝的感受性を有し、このような過密環境での生活から感染しなかった小児は、結果として免疫系があまり発達せず、そのため、サブタイプ発症リスクは上昇する」と、McNally氏は述べた。

「興味深い発見のもう一つは、20~24歳のグループでNSサブタイプを有する女性が優勢であることである。思春期後の発症は、エストロゲンが何らかの形で関与している可能性があることを示唆する。多数の遺伝子が性ホルモンにより管理されていることから、性ホルモンが関与しているのは明らかである。代わりに、遺伝子がオン-オフに切り替わるという変化の、後成的変化が、性ホルモンによって誘発される鍵遺伝子に影響することが原因である可能性がある」

「再発性感染症が小児白血病を制御する可能性があることは、すでにわかっていた。そして、今、ホジキンリンパ腫、特にそのNSサブタイプがそのリストに加わる可能性が出てきた。これらの関係因子をさらに調査するために、前向き研究では、ホルモン変化と再発性感染症を、そしてこれらとリンパ腫リスクとの直接的な関係性を調査すべきである。実際の追跡研究として、遺伝学的研究が新たな可能性を有する場合、多数の感染因子やホルモン状態そのものとの接触と関係する生物学的マーカーを調査する症例対照研究が行われるであろう」と、McNally氏は結論を述べた。

ECCO科学議長のPeter Naredi氏(本研究には関与なし)は、次のように述べた。「この研究では、ホジキンリンパ腫発症の可能性、または発症の制御に影響すると思われる多くの因子についての興味深い洞察がなされた。発表者により参照が行われた症例研究の結果より、われわれはこのテーマに関する知識を増やすべきである」

Richard McNallyによるpress conferenceはこちら。

http://ecancer.org/news/7807 
(2015年9月28日公開)

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