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25 Sep 2015
Breast Cancer Now により資金供給を得るUniversity of Manchesterの研究者らは、エストロゲン受容体陽性(ER= Estrogen Receptor)乳がんを有する女性ホルモン治療に対する耐性が示される理由についての新たな解釈、そして、その問題を克服する潜在的な新アプローチを発見した。
乳がんの約80%程度はERであり、タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤と いった抗エストロゲン療法で治療が行われる。
しかしながら、ここ10年における再発の5件に1件、そして進行性のほとんどは耐性を示す。そのため、この疾患が一部の患者については生存方法を見出せるが、その他の患者には見出せない理由について、われわれは、探究し続けていた。
University of Manchester内のInstitute of Cancer Sciencesから成るこの研究チームは、抗エストロゲン薬を使用した短期治療により、腫瘍増殖が減少し、乳がん幹細胞の活性が増すことを発見した。
彼らは、これらの幹細胞がNOTCH4と呼ばれる信号により駆動することを発見した。
実験室で増殖させた細胞と、患者からマウスに移植した乳がんの結果から、NOTCH4により、がん幹細胞の抗エストロゲン治療を回避できることが示された。
治療前の腫瘍が高レベルのNOTCH4を保持していると、乳がん拡散と生命予後不良につながる。
この研究により、NOTCH4が細胞のアキレス腱の役割を果たしていることを利用し、NOTCH阻害剤をがん幹細胞へ標的投与することで、抗エストロゲン治療に対する耐性を打破できることが示された。
University of ManchesterのInstitute of Cancer SciencesにおけるBreast Cancer Now Research Unitの本研究チームリーダーであるRob Clarke氏は、「タモキシフェン単独に比べ、タモキシフェンとNOTCH阻害薬の併用療法では、タモキシフェンは細胞増殖を抑え、NOTCH阻害薬は新たな細胞形成が行われた乳がん幹細胞を増殖させる」と、述べた。
「これより、NOTCH経路阻害薬、または乳がん幹細胞を標的とした他の薬剤と、標準ホルモン療法との併用療法は、治療抵抗による再発を防止することで、ER乳がん患者治療の改善を可能にすることが示された」
重要なことは、高NOTCH4レベル、またはALDH1と呼ばれる分子の検査により、抗エストロゲン薬に耐性である可能性が高く、また、抗エストロゲン療法とNOTCH阻害薬による併用治療により高い有効性が得られる乳がん患者の予測ができることである。
Breast Cancer Now のSenior Research Communications Officer であるKatie Goates氏は、「この研究により、タモキシフェンに耐性を示す原因、そして、乳がん幹細胞におけるNOTCH4の検査からその耐性の原因を予測し、NOTCH4を阻害し予防する方法について、新たな解釈が示された」と述べた。
「これらの調査結果の検証には時間を要するが、NOTCH経路の一般阻害薬は、すでに乳がん臨床試験で検証済みである。がん治療による耐性発生の対処方法の発見は、臨床分野における大きな課題であり、2050年までにこの破壊的な疾患の死亡を阻止するという野心的な目標に向かって、われわれは研究を進めている」
http://ecancer.org/news/7762
(2015年9月18日公開)