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25 Sep 2015
日本と韓国の研究グループが、マウスの慢性骨髄性白血病(CML=chronic myelogenous leukaemia)幹細胞の活性を維持する新たな栄養の取り込み方法を発見した。
栄養の取り込みを薬理的に抑制することで、体内のCML幹細胞活性は低下を示した。
8月20日出版のNature Communications誌にて、特定の栄養素が生体内のCML幹細胞活性化に有益であること、すなわちCMLに対する分子標的治療の可能性を有することが発表された。
CML幹細胞、すなわちCML細胞の大多数の細胞源が、現在使用されているチロシンキナーゼ阻害剤(TKI=tyrosine-kinase inhibitor)による治療後のCML再発の原因であると報告されている。
「このように、第一世代TKIであるマチニブメシル酸塩(IM=imatinib mesylate)そして第二世代TKIであるダサチニブとニロチニブは、慢性期CML患者の予後を著しく改善したが、治療法は未だ明確ではない。CML幹細胞とCMLを完全に根絶するためには、これらのTKIと代替的なメカニズムを標的とした新たな治療法を併用する必要があるであろう」と、広島大学の仲 一仁准教授は述べた。
広島大学の仲准教授と瀧原義宏教授、ならびに韓国CHA UniversityのSeong-Jin Kim教授と神奈川大学の加藤 将夫教授が率いる国際グループの研究者らは、CMLマウスモデルから、CML幹細胞の代謝産物を解析した。
研究者らは、CML幹細胞は、特定のジペプチド種の蓄積レベルが有意に高く、血液専門医による幹細胞治療が及ばないことを発見した。
特定のジペプチド種は、いったん取り込まれると、CML幹細胞の栄養源として機能し、CML幹細胞の維持の役割を果たす。
重要なことは、マウスにおいて、ジペプチド取り込みの阻害薬により、CML幹細胞活性が阻止されることである。
「CML幹細胞に対する特定の栄養を摂取するプロセスを阻止する阻害薬を使用するという、われわれが提案したアプローチは、TKI療法と併用して、CML患者に治療上の利益をもたらす可能性がある。それは、CML治療を可能にする新たな手段となるであろう」と、仲准教授は述べた。
参考:Naka, Jomen, Ishihara et al. Dipeptide species regulate p38MAPK-Smad3 signalling to maintain chronic myelogenous leukaemia stem cells, Nature Communications
http://ecancer.org/news/7680
(2015年8月28日公開)