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05 Jun 2015
新しい研究によると、多発性硬化症のマウスモデルにおいて、免疫システムを妨害する分子をブロックすることにより、多発性硬化症が50%抑制されることを示した。
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Annals of Neurology誌に発表されたように、研究者ら(University of Montreal、カナダ)は、MCAM (Melanoma Cell Adhesion Molecule)と呼ばれる分子をどのように発見したか記述している。MCAMは、白血球が血液脳関門を越え、多発性硬化症においてみられる神経障害を自由に起こせる中枢神経系に入れるようにする分子である。
論文では、研究者らは、MCAMをブロックした疾患マウスモデルを使用したラボテストにおける将来有望な結果について記述している。研究者らは、人間でもこのように作用する薬剤が多発性硬化症の発病を遅らせ、その進行をかなり遅らせることができる可能があると述べている。
神経科学者である Alexandre Prat教授(University of Montreal)は、以下のように述べた。
「この初めての治療が、障害と疾患の進行をかなり抑制することによって、多発性硬化症の患者のQOLに影響を与えることを確認した」
進行性で、結果的にマヒ、失明、無感覚、そして平衡感覚の乱れや歩行に至る神経疾患引き起こす、多発性硬化症には治療法がない。
多くの国では、多発性硬化症は若年層における非外傷性の身体障害の主因である。多発性硬化症に影響を受けている人々は、世界中で2,300万人程度いるといわれている。
MCAMをブロックすれば、免疫細胞の血液脳関門から神経系への侵入を止められる
多発性硬化症は、免疫システムが自身の組織を攻撃する自己免疫性疾患である。多発性硬化症の場合、免疫システムが脳、脊髄、視神経を含む中枢神経系の組織を攻撃する。
通常は、血液脳関門が免疫システムの白血球による攻撃から中枢神経系を守る。しかしながら、多発性硬化症の場合、血液脳関門がCD4 と CD8という2種類の白血球を中枢神経系の中へ移動させながら漏出する。
これらの白血球は、ミエリン鞘を攻撃する。ミエリン鞘は、神経細胞を取り囲み、電気信号が漏出するのを止める。その結果、神経インパルスを送信し、神経線維に沿ってプラークを増やす能力を弱める。
Prat教授らは、初期の研究に基づいて、CD4 とCD8細胞が、MCAMを血液脳関門を通して中枢神経系へ入りこむためのパスポートのように使用することを示した。
ネズミを使ったラボにおける様々なテストでは、それらの細胞が、MCAMと通常つながっているプロテインとともに、MCAMの相互作用を阻害した場合、それらの細胞が疾患の活動を低下させるだろうとPrat教授は説明した。
最も広く使用されている多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のネズミでは、おおよそ50%の低下した。特に重要な点は、進行に影響することに加えて、最初の症状からその疾患を止めることができることである。
研究のために、Prat教授のチームは、民間会社であるProthena Biosciences社(米国)と協力した。Prothena Biosciences社は、MCAMをブロックし、このように破壊的な白血球が脳血流関門を越えるのを止めるために考案されたPRX003と呼ばれる薬剤を開発した。
Prothena Biosciences社は、今年6月末までに、健常人におけるその試験薬の臨床試験を開始する予定である。また、Prothena Biosciences社は、来年乾癬患者における別の臨床試験を開始したいとしている。
同時に、Medical News Todayは、Nature誌に掲載された皮膚真菌症と皮膚炎の薬剤が多発性硬化症をひっくり返す可能性もあることを報じた。
Case Western University(クリーブランド、米国)による研究では、2つの非処方箋薬が—miconazole と clobetasol—多発性硬化症患者において持続する神経障害をひっくり返すキーを握っている可能性を示唆している。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/294161.php
(2015年5月20日公開)