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17 Jun 2025
New England Journal of Medicine誌に発表された第III相臨床試験結果によると、手術前に免疫療法薬ニボルマブと標準化学療法を併用投与した肺がん患者は、化学療法のみを受けた患者に比べて、治療終了後5年の時点で長期生存率が改善した。
Trinity College Dublin School of MedicineのTrinity St. James’s Cancer Institute (TSJCI)のPatrick Forde教授が、シカゴで開催されたAmerican Society of Clinical Oncology年次総会で発表した。
Forde教授が主導したCheckMate 816試験は、最も一般的な肺がんの一種である非小細胞肺がん(NSCLC)と診断され、手術で切除可能な段階にある患者358例を全世界で登録した。
しかし、手術を受けたにもかかわらず、ステージ2または3の肺がん患者の50%超は、最終的にがんが再発する。
免疫チェックポイント阻害剤として知られる免疫療法薬、とくにPD-1と呼ばれる受容体を阻害する薬は、患者の免疫系に対して腫瘍を露出させることで進行がん患者の生存率を向上させてきた。
しかし、これまでのところ、この治療法が肺がんの初期段階の治療に長期的効果があることを示す研究はなかった。
Forde教授は、米国のJohns Hopkins大学で腫瘍医としてキャリアを積む以前、肺がんに対する手術前の免疫療法(ネオアジュバント療法)の初の臨床試験を主導し、その研究結果は2018年にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。
その研究によると、免疫療法を2回受けた後に手術を受けた患者20例のうち、ほぼ半数は手術の時点でがんがほとんど残っていない、あるいは全く残っていなかったことが示された。
CheckMate 816試験の先行報告では、手術前に化学療法とともに免疫療法を受けた肺がん患者は、手術までにがんが完全に消失する可能性が高く、がんの再発率も低かった。
免疫療法を追加しても副作用は増加せず、手術はおおむね順調に進んだ。
これらの知見により、ニボルマブ+化学療法のネオアジュバント療法が、アイルランドの適格患者に対する標準治療を含め、世界数か国で承認された。
この試験の最新報告では、手術前に免疫療法と化学療法を受けた患者は、化学療法のみを受けた患者よりも5年後の生存率が約10%高かった。
免疫療法と化学療法を併用した患者のうち、病理学的完全奏効と呼ばれる手術時にがんが残っていなかった24%の患者では、5年後までに肺がんで死亡した患者はいなかった。
Forde教授はまた、アイルランドのTSJCI、Beaumont,病院、Galway 病院、Mater病院で実施されている、手術を受ける患者の転帰をさらに改善することを目的とした国際臨床試験の共同指導者でもある。
この研究の一部は、今週、権威あるNature Medicine誌にも掲載された。
NeoCOAST-2試験では、手術前に標準的な化学免疫療法と抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる新しい治療を受けた患者は、手術時に生存がんが残存していない可能性が高く、この追加治療により予後をさらに改善する可能性が示唆された。
Forde教授は次のように述べた。「免疫療法は、ステージ4の肺がん患者の多くが、生活の質を保ちつつ長期生存するのに役立ってきた。最近まで、肺がん手術後の治癒の可能性を高める新しい治療法はなかった。肺がんの手術前に化学療法と免疫療法を併用すると、がんの再発リスクが軽減され、長期生存率が向上することが実証されている。がん臨床試験は、がん患者の転帰を改善する鍵であり、最新の最先端がん治療への早期アクセスの可能性を提供する。アイルランドの患者に臨床試験の選択肢を広げるサポートができることを嬉しく思う」
(2025年6月2日公開)