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02 Jun 2025
電子カルテ由来データベースに基づく実臨床研究により、卵巣がん患者に対する一次化学療法にベバシズマブを追加した場合の有益性は限定的であり、これはこれまでの臨床試験結果と一致していることが示された。
本研究結果は、WileyによりAmerican Cancer Societyが発行する査読付き学術誌CANCER誌のオンライン版に発表された。
ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)に対するモノクローナル抗体で、悪性細胞の増殖および血管新生を阻害する作用があり、さまざまながん種に対する治療薬として承認されている。
卵巣がん患者を対象とした臨床試験において、一次化学療法にベバシズマブを追加しても、化学療法単独と比較して全生存期間の延長は認められなかった。しかし、進行期や術後に残存腫瘍を有する患者など、高リスクの予後因子を有する患者に限定した解析では、この治療戦略により全生存期間の改善 が認められた。
最終的な長期解析においては、ベバシズマブによる全患者コホートにおける全生存期間の有益性は認められなかった。
これらの研究結果が実臨床においても当てはまるかどうかを検証するため、研究者らは、2017~2023年にかけてベバシズマブの有無で化学療法を開始し、中央値1.5年間追跡されたステージ3または4の卵巣がん患者1,752名の電子カルテを解析した。
高リスクの予後因子を有する患者において、化学療法とベバシズマブの併用療法を受けた患者は、化学療法単独療法を受けた患者と比較して、次の治療までの期間中央値が有意に延長した(13.6ヵ月対11.7ヵ月)。
(次の治療までの期間は、治療開始から次の治療開始までの期間を測定することにより、臨床的有益性の持続期間を評価する指標である)。
これらの患者では、併用療法において全生存期間中央値が延長する傾向も認められた(31.1ヵ月対27.4ヵ月)。
高リスクの予後因子を有さない患者では、ベバシズマブの追加による転帰の差は認められなかった。
したがって、有益性は特定のサブグループに限定される傾向がみられ、これは臨床試験の結果を反映していた。
「我々の結果は、臨床試験の結果と同様であった」と、筆頭著者でありUniversity of Virginia School of MedicineのLinda R. Duska医学博士(MD, MPH)は述べた。
「我々の研究結果は、進行卵巣がんの治療において、一次治療にベバシズマブを併用する前に、臨床医が患者のリスク因子を考慮すべきであることを示唆している」
https://ecancer.org/en/news/26469-do-bevacizumabs-ovarian-cancer-clinical-trial-results-hold-up-in-the-real-world
(2025年5月13日公開)