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19 Dec 2024
Roswell Park Comprehensive Cancer Centerの研究により、米国で最も一般的なタイプの白血病である慢性リンパ性白血病 (CLL) に対して、ベネトクラクスという薬剤がCAR-T細胞免疫療法と相乗的に作用する機序が明らかになった。
Roswell Park医学部およびがん遺伝学・ゲノム学科の腫瘍学助教で、本研究の筆頭著者であるMatthew Cortese博士(MD, MPH)は、カリフォルニア州San Diegoで開催された66th annual meeting of the American Society of Hematology(ASH)の口頭抄録セッションで発表した。
慢性リンパ性白血病は、B細胞(免疫系の一部である感染症と闘う白血球)が制御不能に増殖し、免疫系を抑制することで発症する。これにより、さらにがんが増え、感染症が頻発し、CAR-T細胞療法などの治療に対する耐性につながる可能性がある。
2019年からCLLの治療薬としてFDAに承認されたベネトクラクスは、CLL細胞が生存するために必要なタンパク質であるBCL-2を阻害することで、CLL細胞を自滅させることができる。
しかし、Roswell Parkの研究では、CAR-T細胞療法と併用することで、ベネトクラクスが、がんを殺傷するTリンパ球 (T細胞) を強化し、その機能と適応度を向上させるという、あまり理解されていない別の方法で作用することが明らかになった。
「これは、CLL患者の免疫系を修復する興味深い方法になる可能性がある」とCortese博士は述べ、Roswell Parkではこの発見の次のステップとなる臨床試験の開発に取り組んでいることに言及した。
研究チームは、免疫系に対するこの薬剤の効果をさらに理解するために、CLL治療の標準治療であるベネトクラクスによる治療計画を開始したRoswell Parkの患者14名から循環血液を採取した。
Roswell Parkの専門施設と集学的アプローチにより、研究チームは、この最初の血液サンプルとベネトクラクス投与約30日後に採取したサンプルを比較し、患者の免疫細胞における特異的変化を特定した。
この“マルチオミクス”解析には、RNAシーケンシング、フローサイトメトリー、エピゲノミクスおよびメタボロミクスが含まれた。
各層からのデータは、高度なバイオインフォマティクス解析ツールと統合した。その後、ベースラインおよび処理済みの血液サンプルからCAR-T細胞を作製し、研究室でアグレッシブリンパ腫(中高悪性度リンパ腫)細胞株に対して試験した。
「より多くの患者の膨大な分子データを解析することで、現在の最良の治療法をさらに改善すした、CLL患者のためのより効果的な併用療法を開発したいと考えている」とCortese博士は述べる。
「これは超精密医療である。標的療法と免疫療法を組み合わせることで副作用を軽減し、ultra-deep responseをもたらすことが目標である。この先、最終的には一部の患者の治癒につながる可能性がある」
Francisco Hernandez-Ilizaliturri医師 (医学部腫瘍学教授およびリンパ腫研究部長、免疫学准教授) は、本研究の上席著者である。
(2024年12月10日公開)