ニュース
15 Nov 2024
がんを破壊するために免疫系を結集させる治療法が進行性ホジキンリンパ腫患者の生存率を92%という驚異的な水準にまで高め、この疾患の新たな標準療法となることを示唆した。
今週、New England Journal of Medicine誌が革新的な臨床試験結果を発表した。
ホジキンリンパ腫は、一般的なリンパ腫の範疇に入る珍しい血液および免疫系のがんで、若年層が罹患するリスクが最も高い。
研究者らは、この新しい治療法によって、人生の後半における二次がん、心疾患、肺疾患など、治療の長期的な副作用を軽減する方法を発見したと考えている。
「この患者群では、20年後、30年後に乳がんが減少し、不妊症や心臓病が減少するだろう」と、この研究を率いたUniversity of Rochester Medical Center のWilmot Cancer Institute所長Jonathan Friedberg氏は述べた。
ホジキンリンパ腫の標準治療では、一般的に化学療法が行われ、若い患者には放射線療法もしばしば行われるが、治癒率はすでに80%を超えている。
「しかし、治癒しない20%の患者には長い道のりが待ち受けている」と、Friedberg氏は述べた。
「この臨床試験の目標は、副作用や長期毒性を最小限に抑えながら治癒率を向上させることであり、これこそがこの臨床試験を前例のないものにしている」
Friedberg氏は、SWOG Cancer Research Networkのリンパ腫委員会の委員長であり、第Ⅲ相試験の上級研究員であり、責任著者である。
SWOGの大規模チームは、National Cancer Institute(NCI)が資金提供するNational Clinical Trials Networkの一環として研究を行った。
「この研究は、共同グループシステムの力を示す一例である」と、Friedberg氏は述べた。
「米国とカナダの文字通り何十人もの同僚たちとの傑出した協力関係なしには不可能だっただろう」
ロサンゼルスを拠点とする大規模ながん研究・治療センターである City of Hopeのリンパ腫部門長である筆頭著者Alex Herrera氏(MD); シアトルのFred Hutch Cancer Centerの上席生物統計学者Michael LeBlanc氏(PhD)とHongli Li氏(MS); Roswell Park Comprehensive Cancer Center の小児がん専門医Kara Kelly氏(MD)そして、小児および思春期のがん研究に専念する世界最大の組織であるChildren’s Oncology Groupを通じて本試験への症例登録を監督したEmory UniversityのWinship Cancer Instituteの小児がん専門医であるSharon Castellino氏(MD) の貢献を称えた。
S1826として知られるこの試験の要点:
患者約1,000例が、SWOGネットワークを通じて全米の数百のがんクリニックや学術機関で無作為化第III相試験に登録した。この試験に参加したホジキンリンパ腫患者の年齢中央値は30歳である。
半数の患者は最新の標準療法である化学療法とbrentuximab vedotinという薬剤投与を受けた。残りの半数は化学療法とホジキンリンパ腫によく見られる遺伝子異常を標的とするニボルマブによる免疫療法を受けた。
2年間の追跡調査の結果、免疫療法群の92%が生存し、病気の進行も見られなかったのに対し、標準治療群では83%であった。
研究者らは、この研究を非常に包括的なものになるよう計画した。参加者の3分の1が12歳の小児患者であり、約10%が60歳以上の高齢者、そして25%が過小評価された集団であった。
歴史的には、ホジキンリンパ腫の小児患者は化学療法とともに放射線療法を受けることが多かった。その治療は、がんを死滅させることには成功しても、生涯に影響を及ぼす重大な副作用をもたらすことが多い。この試験では、研究者らはこれらの問題を最小限に抑えるために放射線療法を使用しないことを選択したが、免疫療法群では副作用や有害事象がより少なかったことがわかった。
この試験では、若い患者と高齢患者を1つの試験に組み入れ、まったく同じ治療を施すという例外的なアプローチがとられた。
Friedberg氏は、年齢層を超えた治療法の調和は現在、青少年や若年成人のがん患者を対象に計画されている他の研究のモデルとなっている。これにより、医師は新規のがん治療を若年層に迅速に導入できるようになると述べた。
予備試験のデータが非常に強力であったため、NCIは米国の Food and Drug Administrationによる迅速な審査を円滑に進めるため、試験の早期中止を命じた。
2023年、American Society of Clinical Oncology(ASCO)は、その時点で1年間の追跡データがあったこれらの結果を強調した。
最新の研究は当初の調査結果を裏づけた。
FDAは、ニボルマブをステージ3または4のホジキンリンパ腫の標準治療に追加すべきかどうかを決定するだろう。
しかし、ニボルマブはすでに他の適応症で承認されているため、Friedberg氏は、ニボルマブがすぐに治療ガイドラインや通常の治療の一部になると予想している。
NCIはこの研究に資金を提供した。
ニボルマブを製造しているBristol-Myers Squibb社は、NCIとの協力協定に基づき、この研究を支援した。
(2024年10月30日公開)