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e-cancer:乳がん ESMO 2024:乳がん治療後の授乳は安全である

30 Oct 2024

ESMO Congress 2024で発表された2つの国際研究によると、生殖細胞系列のBRCA変異(特定のがん、特に乳がんを発症するリスクを大幅に上昇させるBRCA遺伝子の遺伝性変化)を有する女性を含め、乳がん治療後に授乳する女性は、再発や新たに乳がんを発症するリスクが上昇しないという。

「我々の研究は、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異を有する若年女性が、乳がん罹患後の授乳の安全性に関する初のエビデンスを提供するものである」と、研究の1つを発表するIRCCS Ospedale Policlinico San Martino(イタリア・ジェノバ)の腫瘍学者であるEva Blondeaux博士は述べた。

「これは、これらの女性が母親のニーズと新生児のニーズとのバランスを取ることができる可能性を示している」

乳がんはホルモンの影響を受けるため、以前は乳がん罹患後の妊娠や授乳について懸念があった。どちらもホルモン値の変化を伴うためである。これは特に、BRCA遺伝子変異を有する女性に当てはまり、もう一方の乳房に二次がんが発生するリスクが依然として高い。

最近の研究では、生殖補助医療も妊娠も、生殖細胞系列 のBRCA遺伝子変異を有する女性を含め、乳がんの再発や新たながん発生リスク増加とは関連がないことが示されたが、これらの女性における授乳の実現可能性と安全性に関するエビデンスは、これまでほとんど得られていなかった。

「この新たな知見により、これらの患者に対するカウンセリング方法が改善されることを期待している」とBlondeaux氏は述べた。この国際研究では、乳がんを克服した生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異を有する約5,000名の若年女性を追跡調査した。

その後出産した474名の女性のうち、約4人に1人が新生児に母乳を与えた。半数弱は将来のがんリスクを軽減するために両乳房を切除していたため、母乳を与えることができなかった。

出産後、中央値7年間の追跡調査後、授乳した女性と授乳しなかった女性とで乳がんの再発や新規の乳がんの発生数に差はなかった(調整後部分分布ハザード比1.08、95%信頼区間0.57-2.06、p=0.82)。無病生存率や全生存率にも差はなかった。

BRCA以外にも調査を拡大し、ホルモン受容体陽性の早期乳がん女性を対象とした2番目の新たな試験でも、授乳に関連するリスクは認められないという同様の結果が示された。

「これらの結果は、乳がん罹患後に妊娠し、授乳したいと望む女性にとって重要である」と、本研究の共著者でEuropean Institute of Oncology:IRCCS(イタリア・ミラノ)のFertility & Procreation Unit所長、Fedro Alessandro Peccatori博士は述べた。

「乳がん生存者を、がんに罹患したことのない女性と同じ権利、ニーズ、可能性を持つ女性として考え始める時が来ている」と彼は強調した。

「医師らは、このような女性に出産の機会を与えることに不安を感じていたが、我々は最近、短期的には安全であることを示した。今回の新たな情報により、乳がん生存者にとって、授乳は不可能で安全ではないという神話を覆すことができる。彼女らは、授乳を含む通常の妊娠や新生児との関係を構築することが可能である」

国際的なPOSITIVE試験には、出産のため乳がん治療を一時中断した女性518名が含まれており、そのうち317名が少なくとも1回の生児出生を経験し、ほぼ3名に2名(62%)が授乳を行った。

最初の生児出生から2年後、乳がんの再発または新たに乳がんを発症した女性の割合は、授乳した女性(3.6%)と授乳しなかった女性(3.1%)でほぼ同程度であった。

この結果について、この研究には関与していないが、Gustave Roussy(フランス・Villejuif)の腫瘍内科医で研究者のMaria Alice Franzoi博士は、次のように述べた。「乳がん治療を受けた若年女性の授乳の実現可能性と安全性に関する質の高いデータはこれまで不足していた」

これまで、女性や医療従事者は、乳がん手術後に授乳が可能かどうか、授乳のための補助療法を一時中断することの安全性、それに関連するホルモンの変化についての情報が不足していた」と同氏は説明した。しかし、理想的には研究の追跡調査はより長期にわたって続けるべきであると注意喚起した。

「これら2つの研究から得られたデータは、乳がんと診断された若年女性との実践的な話し合いの指針として非常に役立つ可能性がある」とFranzoi氏は続けた。「我々は、妊孕性温存、妊娠、授乳を含むサバイバーシップケアプランについて診断時から考え、話し合うべきである。そうすれば、彼女たちは乳がんの全過程を通じて、意思決定を共有するための準備が整い、権限が与えられることになる」と同氏は結論付けた。

 

https://ecancer.org/en/news/25325-esmo-2024-breastfeeding-after-breast-cancer-is-safe

(2024年9月14日公開)

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