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e-cancer:がん全般 がん悪液質を止めるには? 頭から始めよう

22 Jul 2024

がんは潜行性の疾患である。腫瘍の進行過程において、身体の免疫反応のような本来は健全な生物学的プロセスを乗っ取り、増殖し、浸潤する。

腫瘍がインターロイキン6(IL-6)と呼ばれる免疫系分子のレベルを上昇させると、重度の脳機能障害を引き起こす可能性がある。がん患者の約50~80%において、これは悪液質と呼ばれる致死的な消耗性疾患につながる。「これは非常に重篤な症候群である」と、Cold Spring Harbor Laboratory(CSHL)のBo Li教授は述べている。

「がん患者の大多数は、がんそのものではなく悪液質によって死亡する。そして患者がこの段階に入ると、基本的に治療法がないため、回復の道はない」と彼は説明する。

今回、Li氏とCSHLの4つの研究室からなる共同研究チームは、脳の最後野(AP)と呼ばれる部位のニューロンへのIL-6の結合を阻害することで、マウスの悪液質を予防できることを発見した。

その結果、マウスはより健康な脳機能を維持し長生きした。将来的には、これらのニューロンを標的とする薬剤が、がん悪液質を治療可能な疾患にするのに役立つ可能性がある。

健康な患者の場合、IL-6は自然免疫応答において重要な役割を果たす。この分子は体内を循環し、脅威となりうるものに遭遇すると脳に警告を発して反応を調整する。しかし、がんはこのプロセスを阻害する。IL-6は過剰に産生され、脳内のAPニューロンと結合し始める。

「これは、いくつかの結果につながる」とLi氏は述べる。「1つは、動物も人間も同じように食べることをやめてしまうこと。もう1つは、悪液質につながる反応を引き起こすことである」

研究チームは、マウスの脳内のIL-6の上昇を抑制するために2つのアプローチを採用した。第1の方法は、カスタム抗体を用いてIL-6を中和する方法。第2の方法は、CRISPRを使用し、APニューロンのIL-6受容体のレベルを下げる方法である。驚くべきことに、どちらの方法でも同じ結果が得られた。マウスは再び食べ始め、体重減少が止まり、長生きしたのである。

Li氏にとって、その示唆するところは衝撃的であった:

「脳は末梢系を制御する上で非常に強力である。脳内の少数のニューロンを変化させるだけで、全身の生理機能に大きな影響を与える。腫瘍と脳機能の間に相互作用があることは知っていたが、ここまでとは思わなかった」と彼は述べる。

Li氏のチームは現在、この発見をヒトを対象に応用する方法を解明する決意を固めている」と述べる。

CSHLのAdrian Krainer教授と元CSHLのZ. Josh Huang教授との最近の共同研究により、チームはさらに一歩近づくかもしれない。

「もし我々が学んだことを悪液質の予防や治療に活用できれば、患者のQOLを劇的に向上させることができる」とLi氏は続ける。

「これは、いつの日か、多くの人々に大きな影響を与える可能性がある」

 

https://ecancer.org/en/news/24993-how-to-stop-cancer-cachexia-start-at-the-top
(2024年7月9日公開)

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