ニュース
22 Feb 2024
侵攻性リンパ腫や血液がん(白血病)の治療では、いわゆるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)が、ますます用いられている。
この治療法では、患者から免疫細胞を採取し、遺伝子工学によってプログラムし、悪性腫瘍細胞上のタンパク質を検出する。
体内に戻ると、CAR-T細胞はがん細胞と闘う。いくつか重い副作用がでるため、この治療法は細心の注意と長期入院が必要である。
University Hospital Cologneの科学者らは、CAR-T細胞ベースの免疫療法をより効果的で安全にするための新しいメカニズムを研究している。
Center for Molecular Medicine Cologne (CMMC)のMarkus Chmielewski博士が率いるチームは現在、CAR-T細胞ベースの免疫療法をより効果的で安全にするための新戦略を提示している。
本研究論文「An anti-CD19/CTLA-4 switch improves efficacy and selectivity of CAR T cells targeting CD80/86-upregulated DLBCL」は、Cell Reports Medicine誌に掲載された。
臨床研究から基礎研究へ
この戦略は、University Hospital CologneのDepartment I of Internal Medicineで治療を受けたリンパ腫患者の組織の検査に基づいている。研究チームは、腫瘍細胞上の表面にあるタンパク質 CD80 および CD86数が増加していることを発見した。
これほど多くのタンパク質は、リンパ腫における免疫系の影響を受けた細胞である健康なBリンパ球(B細胞)では発見されなかった。
これまで利用可能であったCAR T細胞療法が、通常、表面タンパク質CD19のみを標的としていたのとは対照的に、研究者らは、腫瘍細胞に対してT細胞を活性化させるために、補完し合う異なる標的タンパク質を持つ2つのCARコンストラクトを使用した。
CD19は、すべてのBリンパ球に存在するため、最初のCARコンストラクトの標的に選択された。もう一つの標的はCD80/CD86で、これは悪性Bリンパ球に発生するためである。
この目的のために、研究者らは、鍵と鍵穴の原理でCD80とCD86の両方を認識して結合できるタンパク質配列である束縛領域を使用した。
両方のCARコンストラクトは「AND」スイッチとして連携し、両方の表面マーカーが検出された場合のみ、CAR-T細胞が完全に活性化して標的細胞と戦うことが可能になる。
これは、現在までに承認されているCAR-T細胞療法のように、CD19マーカーのみを持つ正常なB細胞には害を与えない。これにより、正常なB細胞は免疫系の一部として重要な働きを継続する。
これは逆もまた然りで、第二のCARコンストラクトのみがCD80またはCD86に結合する場合、 CD19には結合しない。
「われわれのCAR-T細胞は、生物学的な‘AND’スイッチを介して、より分化してより持続する刺激を示す。これらは、以前に承認されたCAR-T細胞アプローチに比べて、より効果的にがん細胞と戦うと同時に、健康なBリンパ球やその他のCD19陽性細胞に害を与えない」と、本研究の筆頭著者であり、臨床実習中の医学生Fabian Prinz氏は結果を要約して述べた。
基礎研究から臨床研究へ
結果は、細胞培養とマウス・モデルを使用して実験室で達成された。
「われわれの今後数年間の次のステップは明確である。B細胞リンパ腫患者を対象とした臨床試験の準備と提案された戦略の試験である」と、Chmielewski氏は述べた。
「CAR-T細胞アプローチの前臨床の成功は、患者の現実的な問題を認識し、それを実験室で対処できる科学的問題に変換し、実験を通じて解決策を見出すトランスレーショナルリサーチの重要性を示す一例である」と、彼はまとめた。
https://ecancer.org/en/news/24216-new-strategy-for-safer-car-t-cell-therapy-in-lymphomas
(2024年2月12日公開)