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01 Feb 2024
“SNAF”と呼ばれる革新的なコンピューターツールは、がん免疫療法の新たな可能性をより幅広い患者にもたらす一助となる可能性があるという研究論文が、Science Translational Medicine誌に掲載された。
Splicing Neo Antigen Finder (SNAF)と呼ばれる研究ツールは、Cincinnati Children’sとUniversity of Virginiaの学際的研究チームによって開発された。
本プロジェクトは、Cincinnati Children’sのBiomedical InformaticsのGuangyuan Li 氏(PhD)と、Nathan Salomonis 氏(PhD)が主導した。
共著者らによれば、当ツールは、すでにさまざまながんに共通する免疫原性標的の発見に役立っており、高度に焦点を絞ったがん治療の新しい道を開く可能性があるという。
「この発見が意味するところは大きい」と、当研究論文の共著者でCincinnati Children’s のCancer Pathology ProgramのディレクターであるH. Leighton “Lee” Grimes氏(PhD)は、述べる。
「SNAFはがん患者の最大90%に存在する共通のスプライシング・ネオアンチゲンを特定することによって、新たな治療標的を提示するだけでなく、がん生物学におけるわれわれの理解に挑戦し、広げる」
最新ツールが新たな標的を見つける方法
患者の免疫系を利用してがんと闘う免疫療法は、多くの場合、遺伝子変異から生成されるネオアンチゲンを標的とする。
しかしながら、このアプローチは、通常、変異負荷の高い人のみ有効である。
SNAFは、転写後修飾、特にこれまでほとんど利用されてこなかったスプライシングエラーから生じるネオアンチゲンを特定することで免疫療法の領域を広げることを目指している。
SNAFは、新しい人工知能のアプローチを用いて、T細胞が識別できる免疫原性ペプチドと、B細胞が標的とできる細胞外成分が変化した新規タンパク質を予測する。
この二重のアプローチは、獲得免疫系の両腕に作用する包括的な免疫療法の開発に不可欠である。
メラノーマの有望な標的が浮上
研究チームは、選択的mRNA経路から産生される可能性のある全てのネオアンチゲンを分類し、スプライシング・ネオアンチゲンの量が、メラノーマ患者の生存率と免疫療法への反応が相関していることを発見した。
前述の予測の一つであるSLC45A2は、その高い腫瘍特異性と免疫原性により、特に有望な標的として浮上している。
研究チームは、T細胞ネオアンチゲンに加え、B細胞に焦点を当てたパイプラインであるSNAF-Bを通じ、ExNeoEpitopesと呼ばれる新しいクラスの腫瘍特異的細胞外ネオエピトープを発見した。
これらのExNeoEpitopesは、モノクローナル抗体やCAR-T細胞療法の開発に大きな期待が寄せられている。
次のステップ
「これは始まりに過ぎない」と、共同執筆者で免疫生物学部門の研究者でもあるTamara Tilburgs 氏(PhD)は述べる。
「SNAFのワークフローにおける柔軟性は、がんの解明と撲滅へさらに前進させるために、継続的に適応可能なことを意味する」
Salomonis博士らは現在、これらのツールを最も治療が難しいがんに適用し、治療法開発の最適な標的を見つけ、その単一細胞の起源を理解しようとしている。
(2024年1月18日公開)