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29 Jan 2024
銅は体内でエネルギーを生成するために必要な必須微量元素であり、人間が大気中で生きていくことを可能にしている。
しかし、銅の蓄積量の増加は、淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)と呼ばれる最も一般的なタイプの腎臓がん患者の予後不良と関連していることが、研究によって判明した。
The University of Cincinnati Cancer CenterのMaria Czyzyk-Krzeska, MD, PhDは、銅がccRCC の進行と再発にどのように寄与しているかを調査するため、国立衛生研究所から5年間で280万ドルの助成金を受けた。
研究背景
喫煙はccRCCの危険因子である。
Czyzyk-Krzeska氏らは、UC、Cincinnati VA Medical CenterおよびNational Cancer Instituteの泌尿器科腫瘍学部門からの患者サンプルを分析した結果、喫煙者の腫瘍は非喫煙者と比較して銅レベルが有意に高いことを見出した。
いくつかの別の患者群を用いた追跡調査では、より進行した腫瘍や外科的切除後に再発した腫瘍における銅蓄積の増加が示された。
「このことは、銅が淡明細胞腎細胞がんの腫瘍進行に潜在的な影響を及ぼす可能性があることを示している」と、University of Cincinnati Cancer Centerの研究者であり、UCのCollege of Medicineがん生物学部門の教授であるCzyzyk-Krzeska氏は述べた。
研究内容
Czyzyk-Krzeska氏によれば、この研究の最初の目的は、ccRCC細胞がより多くの銅を取り込むメカニズムを明らかにすることである。
研究チームはまた、腫瘍細胞に対する銅の代謝作用、特にミトコンドリア(細胞のエネルギーを産生する部分)の代謝において銅が果たす役割についても、さらに解明する予定である。
この研究の第3の目的は、腫瘍細胞の銅特異的特徴のいずれかが、ccRCCの新たな治療法を切り拓くことができる脆弱性を有するかどうかを検証することである。
「腎臓がんの治療には、基本的に2~3種類の主要な治療法があるが、最終的には反応しない腫瘍や再発する腫瘍が常に存在する」とCzyzyk-Krzeska氏は述べた。「われわれが発見したことが、新たな治療法のきっかけになることを期待している」
この研究データは、ccRCCのバイオマーカーとしての銅の可能性にも光を当てるものであるとCzyk-Krzeska氏は述べた。
「特定の腫瘍では銅の濃度が高いので、予後を評価するためのバイオマーカーとして、また、この特定の腫瘍群に対してどの治療が適切かを予測するためのバイオマーカーとして、銅が使用できると考えられる」とCzyzyk-Krzeska氏は述べた。「このデータは、ccRCCの治療における個別化医療にとって重要になると考えている」
Czyzyk-Krzeska氏によると、現在進行中の研究はTom Cunningham氏、David Plas氏、Krushna Patra氏ら同分野のがん生物学者、UCのバイオインフォマティクス専門家Jarek Meller氏、元同大学教員で現在はMount Sinai New YorkのIcahn School of Medicineに勤務する分析化学者Julio Landero氏らによる学際的な取り組みであるという。チームはまた、UCの泌尿器腫瘍医、泌尿器科医、病理医とも協力している。
https://ecancer.org/en/news/24076-research-to-study-copper-effects-on-kidney-cancer
(2024年1月18日公開)