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19 Sep 2023
年齢を重ねるにつれて、我々の身体は免疫機能の低下やさまざまな健康問題に対する脆弱性の増加など、多くの課題に直面する。
最近、ある研究がこれらの課題に光を当て、高齢者にとって広範囲に影響を及ぼす可能性のある解決策を明らかにした。
加齢の過程では、造血系や免疫系の適切な機能が低下することが多く、高齢者は感染症や血液疾患に罹患しやすくなり、さらには腫瘍も発生しやすくなる。
2023年8月31日にNature Ageing誌に発表された研究は、ローザンヌ (スイス) のUNIL-CHUV腫瘍学科のグループリーダーであり、Ludwig Institute for Cancer Researchのローザンヌ支部のメンバーであるNicola Vannini氏が主導し、血液系の重要な担い手である造血幹細胞 (HSC) に焦点を当てたものである。
造血幹細胞はさまざまな種類の血液細胞を生成する役割を担っており、健康な免疫システムを維持する上で重要な役割を果たしている。
加齢に伴い、造血幹細胞は血液を再生する能力が低下し、特定の細胞系を好むようになり、免疫系の機能不全の一因となる。
しかし、研究者らは驚くべき解決策を見出した。
細胞のエネルギー源であるミトコンドリアを標的とするウロリチンAという天然化合物を導入することで、造血幹細胞の機能低下を回復させることができたのである。
ミトコンドリアの異常が造血幹細胞の老化の一因であることが特定された。
ウロリチンAはミトコンドリア調節因子として働き、造血幹細胞内のミトコンドリア機能を効果的に回復させた。
ウロリチンは食物中には存在しないが、その前駆体は存在する。
ウロリチンAは、ヒトの腸内細菌叢によってエラグ酸とエラジタンニンが変化した結果である。
エラグタンニンはザクロ、ナッツ類、一部のベリー類に含まれている。
この前臨床研究で最も興味深い発見は、この介入によって高齢の造血幹細胞の血液再構成能力が若返っただけでなく、高齢マウスの免疫系機能も改善したことである。
ウロリチンAを栄養補助食品として取り入れたところ、免疫系のリンパ球区画が活性化されただけでなく、造血幹細胞全体のパフォーマンスも向上した。
これはウイルス感染に対する免疫反応の改善にもつながり、加齢に伴う免疫系の低下に対抗できるウロリチンAの可能性を示している。
要するに、この研究は、ウロリチンAを用いてミトコンドリアのリサイクルを促進することにより、造血系と免疫系の老化プロセスを覆すことが可能であることを示している。
これらの知見は、高齢者の加齢に伴う健康状態への対処を目的とした介入法の開発に有望であり、臨床試験の構想への道を拓くものである。
https://ecancer.org/en/news/23651-reversing-ageing-in-the-blood-stem-cells-and-the-immune-system
(2023年9月7日公開)