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21 Jul 2023
乳がんは異種疾患であるが、症例の70%は、エストロゲン、プロゲステロン、またはその両方に対するホルモン受容体の存在によって特徴づけられる。
転移性疾患を呈するこれらの患者に対する治療の第一選択は、CDK4/6阻害剤と組み合わせた内分泌療法であるが、大多数は2年以内に治療抵抗性を発症する。
このたび、Instituto de Medicina Molecular João Lobo Antunes(iMM、ポルトガル)のスタッフ・サイエンティストであるSandra Casimiro氏と、iMMの主任研究員でHospital Santa Maria(ポルトガル)の腫瘍学者であるLuís Costa氏が率いる新しい研究が、科学雑誌Cell Reports Medicineに掲載された。その研究では、転移性乳がんの治療に対する抵抗性を回避するために、標準治療と組み合わせて使用可能ながん細胞の有望な分子標的を発見した。
「現在、エストロゲンおよび/またはプロゲステロンの受容体を発現する転移性内腔性乳がんの第一選択治療は、内分泌療法とCDK4/6阻害剤の併用である。
この治療法は乳がん患者にとって人生を変える発見だったが、約20%は無反応で、治療に反応した患者の大部分は2年以内に耐性を獲得する」と、腫瘍学者でこの研究の共同リーダーであるLuís Costa氏は言う。
「われわれは、トリプルネガティブ乳がんにおける乳がんの攻撃性の重要なメディエーターであるRANKシグナル伝達経路が、内腔性乳がんの治療抵抗性に関係している可能性を研究した」と、この研究の共同リーダーでiMMの研究者であるSandra Casimiro氏は説明する。
「本研究では、がん細胞における高レベルのRANKが、CDK4/6阻害剤による治療抵抗性と関連していることを発見した。
CDK4/6阻害剤で治療した患者の腫瘍のヒトサンプルのデータセットを分析することにより、腫瘍中のRANKレベルが治療期間中に経時的に増加することを発見した。
このことは、RANKが後天性抵抗性にも関与していることを示唆している」と、Sandra Casimiro氏は続け、以下のように付け加えた。
「これを念頭に置き、現在の治療法と組み合わせてRANK経路を阻害すると治療効果が向上するかどうかをインビトロおよびマウスモデルで試験したところ、RANKリガンド阻害剤の存在下でがん細胞が治療によく反応することがわかった」
「RANK経路の薬理学的阻害は、すでに臨床で使用されている。
われわれの研究は、RANKリガンド阻害剤と転移性内腔性乳がんの現在の標準治療との併用療法が、無反応患者の転帰を改善し、治療抵抗性を回避または遅らせる可能性があることを示唆している」と、これらの所見の臨床的関連性についてLuís Costa博士は結論付けている。
臨床試験の結果、RANKリガンド阻害は、ホルモン反応性乳がんに対する現在の標準治療に対する有望な追加療法となる可能性がある。
本研究は、Hospital de Santa Maria(ポルトガル)、Centro Hospitalar Universitário Lisboa Norte(ポルトガル)、そしてSpanish National Cancer Research Centre(スペイン)、Bellvitge Biomedical Research Institute(スペイン)の研究者と共同でiMMにおいて進められた。本研究は、Portuguese Foundation for Science and Technology(FCT)から資金提供を受けた。
(2023年7月14日公開)