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24 Apr 2023
免疫療法は、多くのメラノーマ患者の転帰を大きく改善した。しかし、この種の治療に効果的な反応がみられない患者集団に対する新しい治療法の必要性は依然として残っている。
モフィットがんセンターの研究者は、腫瘍の発生を抑制して抗腫瘍免疫を促進する新しい治療標的に注目している。その1つがSTING(Stimulator of Interferon Genes)吸入経路である。
Nature Communications誌に掲載された新たな論文で、モフィットがんセンターとマイアミ大学ミラー校医学部の研究チームは、STING経路を標的とした併用治療により、抗腫瘍活性が向上することを実証した。
STING経路は、ウイルスや細菌に対する免疫応答の重要な制御因子であり、抗腫瘍免疫に寄与している。STINGシグナルの阻害は数種類のがん細胞株で観察され、メラノーマなどの一部のがんでは腫瘍の進行に伴ってSTINGタンパク質の発現量が減少する。これらの結果から、腫瘍環境内でSTINGシグナルを活性化するアゴニスト薬が抗腫瘍効果を持つ可能性が示唆された。
「この仮説は、多くの前臨床試験で確認されている。しかし、STINGアゴニストは、ヒトの臨床試験で満足できる結果を出しておらず、未知のメカニズムがこれらの反応の悪さを生じさせていることを示唆している」と、モフィットがんセンター免疫腫瘍学プログラムの研究者であり筆頭著者のRana Falahat, PhDは述べている。「このことが我々の研究を後押しした」。
モフィットがんセンターとマイアミ大学の研究チームは、STINGシグナルに関する理解を深め、STINGアゴニストの抗腫瘍活性を向上させる方法を調べることにした。研究チームは以前、STINGタンパク質の発現を制御するDNA領域が、DNAに化学的なメチル基が付加されるメチル化と呼ばれるプロセスによって修飾されることを明らかにした。この修飾はSTINGのタンパク質レベルを低下させるため、腫瘍の発生を抑制するSTINGタンパク質の発現量を減らすことになる。研究チームは、メチル化を阻害し、腫瘍細胞におけるSTINGの発現量を増加させる薬剤が、STINGアゴニストと連携してがん細胞を死滅させる可能性があるのではないかという仮説を立てた。
研究者らは、腫瘍細胞または周囲の免疫細胞のいずれかにSTINGシグナルが欠損しているメラノーマのマウスモデルを用いて実験を行った。その結果、ヒトのSTING遺伝子と同様に、マウスのSTING遺伝子もメチル化によって制御されていることが判明した。
メチル化を阻害する薬剤で細胞を処理すると、STING発現量とシグナル伝達が増加し、抗腫瘍免疫を増強する化学伝達物質の産生につながった。さらに、メチル化阻害剤とSTINGアゴニストでマウスを処理すると、CD8 T細胞という免疫細胞の存在と活性に依存した抗腫瘍活性が向上することも実証された。
これらの結果から、メチル化阻害剤によって腫瘍細胞内のSTINGシグナルを再活性化することで、STINGアゴニストに対する治療反応を形成できることが明らかになった。研究者らは、これらの前臨床試験で得られた知見が、臨床におけるがん患者へのより良い治療法につながることを期待している。
「各成分の最適な投与量と治療スケジュールを詳細に特定するためには、さらなる研究が必要だが、本研究から得られた知見は、メラノーマやおそらく他の固形腫瘍においても、適切な患者選択による適切な臨床治療法を設計するための枠組みをもたらすだろう」と、責任著者でモフィットがんセンターTranslational Scienceの副センター長であり、Michael McGillicuddy Endowed Chair for Melanoma Research and TreatmentのJames J Mulé, IPhDは述べた。
(2023年3月28日公開)