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17 Apr 2023
前立腺特異抗原(PSA)と同様に、前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、医師が転移した前立腺がんについて知ることができるバイオマーカーである。
PSMAは、ほとんどの前立腺がんの細胞表面にあるタンパク質で、PET(陽電子放射断層撮影法)でスキャンすることにより、前立腺がんが体内のどこに広がっているかを示すことができ、新しく承認された放射性治療による標的とすることができる。
しかし、去勢抵抗性前立腺がん患者の15~20%では、病期が進むとPSMAの産生が停止する。
Dana-Farber Cancer Instituteの科学者らは、Nature Cancer誌に掲載された新しい研究において、前立腺がん細胞におけるPSMAの発現を上下させるメカニズムに新たな光を当てた。
この結果は、医師が特定の患者にPSMAを標的とした治療法を選択するのに役立つと研究者らは述べている。
以前から、アンドロゲン受容体(アンドロゲンというホルモンに反応して細胞の増殖を促す構造)が、前立腺がん細胞におけるPSMAの産生を制御していることが知られている。
Nature Cancer誌掲載の研究において、Dana-FarberのHimisha Beltran医学博士とMartin Bakht博士が率いる研究者らは、アンドロゲン受容体の発現にかかわらず、肝臓転移では他の部位よりもPSMAの発現が低いことを発見した。
さらに、ARが陰性でもPSMAを発現している腫瘍と、ARが陽性でも発現していない腫瘍があることを発見し、ARを介さない制御機構を探した。
その結果、HOXB13タンパク質がPSMAの重要な制御因子であることが判明した。去勢抵抗性前立腺がんがARを持たない状態になると、HOXB13が単独でPSMAを制御できるようになる。
このことと、PSMAを抑制する「エピジェネティック」なメカニズムの発見は、PSMAの制御システムがかつて考えられていたよりも複雑であること、前立腺がんには複数のサブタイプがあり、特定の標的治療薬によって最適に治療できる可能性があることを示している。
また、PSMAが少ない転移性前立腺腫瘍で発現量が増加するアミノ酸を同定した。
この発見は、前立腺がんのサブタイプを識別するためのPSMAイメージングを補完する新しいバイオマーカーにつながる可能性がある。
(2023年4月11日公開)