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e-cancer:がん全般 がん放射線治療後の疲労をもたらすホルモンを特定

12 Jan 2023

疲労はがん放射線治療でよくみられる副作用であり、患者を衰弱させる可能性がある。
マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者らによるチームは最近、放射線療法に対する反応として皮膚からホルモンの一種であるβ-エンドルフィンが産生され、このβ-エンドルフィン値の上昇が放射線療法後の疲労の一因となることを発見した。
Science Advances誌に掲載された本研究は、このホルモンの抑制が患者の利益につながる可能性を示唆している。

数年前、Mass General Cancer Centerのメラノーマプログラムのディレクターであり、MGHの皮膚生物学研究センター所長であるDavid E. Fisher医学博士らは、紫外線照射によって皮膚から快感ホルモンであるβ-エンドルフィンが放出され、オピオイド様反応や日光曝露への依存が助長されることを見出した。
その後、この反応には紫外線を介したビタミンD濃度の維持が関係していることが進化論的に説明されるようになった。
また、オピオイド系薬物は疲労と関連する一般的な症状である鎮静を引き起こすことが知られている。
これらの知見からFisher氏は、紫外線によるβ-エンドルフィンの増加はがん治療でよく用いられる電離放射線などの他の放射線にも適用できるのではないかと考えた。

放射線治療では一般的に皮膚が曝露されるため、皮膚由来のβ-エンドルフィンが放射線治療に伴う疲労を説明するのに役立つのではないかという疑問が生じた。
そこで研究者らは、放射線治療のモデルとしてラットの尾に放射線を照射した。
ラットに6週間放射線を照射するとβ-エンドルフィンの血中濃度が上昇し、オピオイド使用時にみられる特性(疼痛閾値の上昇など)を示し、疲労に似た反応がみられた。

これらの効果は、遺伝子改変でβ-エンドルフィン産生能を欠失したラットではみられなかった。
さらに、オピオイド拮抗薬であるナロキソンを投与するとオピオイド作用と疲労様症状の両方が回復した。

この結果は、皮膚由来のβ-エンドルフィンが疲労などの放射線治療による全身的な影響に関与していることを示唆している。
「今回の知見から、放射線疲労は安全性が高く入手が容易なオピオイド拮抗薬を用いて治療または予防できる可能性がある」とFisher氏は述べた。

https://ecancer.org/en/news/22498-researchers-identify-hormone-that-drives-fatigue-after-cancer-radiation-therapy
(2022年12月22日公開)

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