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11 Oct 2022
膵臓がん腫瘍がCTやMRI検査で見逃され、命を救う治癒手術の機会を狭めていることが、本日開催されたUEG Week 2022で発表された研究によって明らかになった。
この研究では、画像診断を受けて膵臓がんと診断されなかった患者が、後に膵臓がんと診断されたケース(PIPC:Post-imaging pancreatic cancer)を分析した。
その結果、PIPC症例の3分の1以上(36%)が回避できる可能性があり、患者の転帰が心配されるがんの発見率が低いことが明らかになった。
英国の研究者らは、2016年~2021年にかけて膵臓がんと診断された患者600名の記録を調査した。
そのうち46名(7.7%)は、最初の検査でがんの診断がつかなかったものの、3か月~18か月後に膵臓がんの診断を受けた。
CTとMRIの画像を放射線科医が別々にレビューし、見逃された症例を分類するアルゴリズムを開発し、見逃された理由の最も可能性の高い説明を特定した。
本研究の主執筆者である英国University of BirminghamのNosheen Umar博士は、「膵臓がんでは治癒のための手術期間が非常に短いことが多く、患者が生存する可能性を最大限に高めるために、できるだけ早くこの病気と診断されることが重要である」とコメントしている。この研究では、画像診断後の膵臓がん患者の3分の1以上で膵臓がんの兆候が最初に見落とされており、これは大きな機会損失であることがわかった。
検査したPIPC患者の約半数(48%)で、肝胆膵の放射線専門医が検査した際に見逃していたがんの徴候があったとみられる。
PIPC患者の28%において、胆管や膵管の拡張など膵臓がんに関連する画像による徴候が認識されず、さらに調査されることはなかった。
「われわれは、この研究が膵臓がんの画像診断後の問題や、膵臓がんを見逃す一般的な理由に対する認識を高めることを期待している」と、Umar博士は説明する。「そうすれば、膵臓がんの早期診断の可能性を高め、患者の生存率を上げ、最終的には命を救うことができる」
欧州では、膵臓がんによって毎年95,000人が死亡しており、すべてのがんの中で最も生存率が低く、診断時の平均余命はわずか4.6か月である。
2035年には、膵臓がんの患者数は40%近く増加すると予測されている。
多くの患者は、末期に診断される。というのも、この病気は初期症状が曖昧であることが多く、早期発見が難しい。
症状としては、黄疸、腹痛、背部痛、原因不明の体重減少、吐き気などがある。
また、病気の性質が複雑であるため、早期診断のためのスクリーニングを実施することも困難である。
(2022年10月5日公開)