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05 Oct 2022
Cancer Research UKのNick Payne氏らが9月21日にオープンアクセス誌PLOS ONEに発表した新たな研究によると、誰も喫煙していなければ、2013~2017年の間に英国におけるがん発生率の社会経済的格差の大部分を防ぐことができたであろう。
喫煙は、英国において予防可能ながんおよび死亡の主な原因であり、2015年の英国における全がん患者の原因の約15%を占めている。
また、がん発生率は英国では社会経済的地位によって異なり、最も所得の低い五分位の集団は最も高い集団に比べ、全体のがん発生率は17%も高い。
今回の研究では、喫煙との関連性を強く示唆する15のがん種に焦点を当てた。これらのがん種は、英国における貧困に関連するがん症例の10人中8人以上に関与している。
2013~17年の喫煙に起因するがん症例は、がん発生率と喫煙率(2003~07年、喫煙とがん診断の間のタイムラグを考慮)、喫煙者と非喫煙者のがん診断の相対リスクを組み合わせて計算されたものである。
これらの喫煙に起因する症例は、貧困に関連するがん症例全体に占める割合で示された。
この研究では、人口の最貧困5分位のがん患者のうち21.1%のがんが喫煙に起因すると考えられるが、所得が最も高い5分位のがんのうち9.7%のみが喫煙に起因すると考えられ、約2.2倍の差があることが判明した。
もし、すべての人が所得が最も高い5分位と同じ喫煙率であれば、貧困に関連するがんの20.3%、つまり毎年5,000件以上のがんが予防できたはずである。
喫煙者がいなければ、貧困に起因するがん発生率の61%、つまり毎年16,000人以上の症例を予防できたはずである。
がんの種類別では、喫煙に起因する症例の割合は、肺がん、喉頭がん、咽頭がん、膀胱がん、食道扁平上皮がんで最も高かった。
著者らは、喫煙の不平等に取り組むタバコ規制政策は、がん発生率を含む喫煙に関連する健康障害の低減に効果があることから、費用対効果が高いことが証明できると結論付けている。
著者らは、「本研究は、英国における貧困に関連したがん発生率に対する喫煙の寄与を定量的に評価した最初の研究である。この結果は、喫煙が英国におけるがん発生率の不平等の主な要因であることを確認するのに役立つため、政策手段は、最も貧困な集団に特に焦点を当て、喫煙率を低下させるために継続すべきである」と補足している。
(2022年9月21日公開)