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09 Sep 2022
腫瘍は、乳がんなど同じがんであっても、罹患した人によって大きな違いがある。
そのため、プレシジョン・オンコロジーでは、腫瘍の特定の遺伝的特徴をターゲットとし、それを治療に取り込む。
この方法で、既存の治療法を「オーダーメイド」することで、副作用を回避し、高額な治療費を節約することができる。
これは、未来のがん治療と言える。
このたび、University Hospital Bernの腫瘍内科医でUniversity of Bernの博士研究員であるDilara Akhoundova博士と、Department for BioMedical Research (DBMR)とBern Center for Precision Medicine (BCPM)のディレクターであるMark A Rubin教授が、マルチオミックス腫瘍プロファイリングの最新の進歩をまとめ、レビューした。
Cancer Cell誌に掲載されたレビューでは、レビューされた技術のトランスレーショナル検証の現状を批判的に捉え、精密治療への統合の可能性について分析している。
「これらの新テクノロジーは、これまで見たこともないような腫瘍の深い理解へとわれわれを導く。標準的なツールでは、スイスはオランダよりも標高の高い国であると言われていたように、これらの新技術では、山、谷、湖などの3Dの風景を見ることができる」と、Bern Center for Precision Medicineのディレクター、Mark A Rubin氏は述べている。
しかし、最新技術を臨床で活用するためには、標準化が必要であったり、膨大なデータの評価や規制当局の認可のために臨床に新たなインフラを必要としたりと、まだまだハードルが高いのが現状である。
プレシジョン・オンコロジーにおける最新の有望技術の一つが、血液検査によって患者のがん種をより早く、低侵襲で情報提供を可能にするリキッド・バイオプシーである。
特に肺や膵臓など体の深部にある腫瘍の場合、侵襲的な処置が必要となり、時には全身麻酔をかけることもある。
リキッドバイオプシーのような技術は、トランスレーショナルリサーチや臨床がん研究において多く利用されている。
その臨床的な可能性はすでに非常に高いが、場合によっては、特定の試料に対して「測定精度」を高めるための追加的な方法が必要となる。
また、他のイノベーションはまだ初期段階にあり、目標を達成できるかどうかさえ臨床的に検証する必要がある。
BCPMでは、新規の最先端技術を精密医療に応用していくことを重要視している。
Mark A Rubin教授、Marianna Kruithof-De Julio教授、Sven Rottenberg教授など、BCPMの研究者が主導するがんトランスレーショナルリサーチプロジェクトや、University Hospital Bernや他のスイスの施設の臨床腫瘍医との緊密な連携は、精密腫瘍学をさらに進め、新技術の患者に対するアプローチのために欠かせないものとなっている。
本研究の主執筆者であるDilara Akhoundova氏は、「われわれのレビューでは、これらの新アプローチが、患者における腫瘍治療に対する反応のより良い予測のための検査にどのように移行できるかを検討している」と述べている。
ベルンのプレシジョン・オンコロジーに関するもう一つの重要な取り組みが、Swiss Oncology and Cancer Immunology Breakthrough Platform (SOCIBP)で、スイスのがん研究において共通のゲノム「言語」の確立を目指している。
このプロジェクトは、連邦政府のイニシアチブであるSwiss Personalised Health Network(SPHN)から資金提供を受けている。「現在進行中のトランスレーショナルプロジェクトの1つは、前立腺がんやその他の固形がんにおけるDNA修復を評価するゲノム検査の標準化と臨床的検証に焦点を当てている」と、Rubin氏は説明する。
このプロジェクトは、DNA修復異常を持つ腫瘍の精密な腫瘍学的治療を可能にする、より信頼性の高い予測バイオマーカーを開発することを大きな目標としている。
https://ecancer.org/en/news/22189-technological-advances-in-cancer-therapy
(2022年9月2日公開)