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e-cancer:がん全般 がん関連線維芽細胞が薬剤感受性を誘導することを発見

05 Sep 2022

腫瘍微小環境に存在する細胞は、がんの増殖、患者の生存と治療への反応に大きな影響を与えることが知られている。

腫瘍環境におけるがん関連線維芽細胞は通常、腫瘍の進行や治療抵抗性と関連しているが、これらの線維芽細胞ががん細胞の治療に対する感受性を高めている可能性を示唆する研究もある。

Moffitt Cancer Centerの研究者らはScience Signaling誌に掲載された新しい論文でこれらの相反する研究に着目し、がん関連線維芽細胞は腫瘍細胞の種類や治療薬の違いに応じて、薬剤感受性を促進することもあれば抑制する場合もあることを明らかにした。

研究チームは一連の実験を通して、異なる非小細胞肺がん細胞株において、がん関連線維芽細胞が薬剤応答に及ぼす影響を明らかにした。

その結果、がん関連線維芽細胞が腫瘍細胞へ与える影響は非小細胞肺がんの種類や治療薬によって異なることが分かった。

例えば、変異型KRASタンパク質を持つ非小細胞肺がん細胞株では、がん関連線維芽細胞の存在は2種類のMEK阻害剤に対する耐性を誘導した。

しかし、がん関連線維芽細胞は変異型EGFRタンパク質を持つ非小細胞肺がん細胞株をEGFR阻害剤に対して感作させた。

興味深いことに、正常な肺関連線維芽細胞は薬物治療に対して細胞を感作することはなかった。このことから、がん関連線維芽細胞は、薬剤応答の違いを引き起こす何らかの因子を細胞環境に分泌していることが示唆された。

研究チームは、このような差異をもたらす因子を特定するために、がん関連線維芽細胞と正常線維芽細胞を比較した。

その結果、がん関連線維芽細胞では細胞の増殖、死、遊走に関与するインスリン様成長因子(IGF)シグナル伝達経路の一部である分泌タンパク質のレベルが変化していることが判明した。

具体的には、がん関連線維芽細胞はIGFシグナルを阻害するインスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)と呼ばれるタンパク質をより多く分泌し、これによってIGFシグナルを活性化するIGFの分泌が少なくなっていた。これらの変化が組み合わさることで、IGFシグナル伝達経路が阻害される。

さらなる解析の結果、IGFBPはEGFR阻害剤治療に対して肺がん細胞株を感作し、IGFタンパク質はEGFR阻害剤治療に対する耐性を誘導することが判明した。

また、EGFR阻害剤治療に対する生存シグナルは、IGFBPシグナル伝達経路の一部であるIGF1RとFAKというタンパク質に依存していることが確認された。重要なことは、IGF1RとFAKの活性を阻害する薬剤が変異型EGFR肺がん細胞のEGFR阻害剤に対する感作を誘導することを発見し、この併用療法が臨床で有効である可能性を示唆していることである。

「これらの結果は、がん関連線維芽細胞の腫瘍促進作用および競合する腫瘍抑制作用を明らかにし、がん関連線維芽細胞を区別しないまま除去することは、がん治療にとってデメリットになる可能性があるという、蓄積されつつあるエビデンスに加わるものである」と、Moffitt Cancer Centerの研究科学者で本研究の筆頭著者であるLily Remsing Rix, Ph.Dは述べた。

また、Moffitt Cancer Centerの創薬部門の客員で本研究の主任研究員であるUwe Rix, Ph.Dは「我々はがん関連線維芽細胞を介した耐性獲得の仕組み だけでなく、その腫瘍抑制経路の機構的理解により、これらの効果を模倣する改良型治療法の合理的設計や薬剤耐性の発現を遅らせる方法を開発できる 可能性があることを示している」と述べた。

https://ecancer.org/en/news/22158-researchers-discover-cancer-associated-fibroblasts-induce-drug-sensitivity

(2022年8月17日公開)

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