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e-cancer:がん全般 がん治療の転帰を良好に予測する患者の声

03 Jun 2022

身体的ウェルビーイング(well-being)に関する乳がん患者自身の評価は、臨床医中心のツールより、がん治療に対する効果を良好に示すことが新たな研究によって確認され、治療プロセスにおいて意思決定を共有する重要性が浮き彫りとなった。

また研究者らは臨床医中心のデータと患者が自己申告するデータの違いを指摘し、中には患者の身体的ウェルビーイングを過剰評価する臨床医がいることも分かった。

「患者本位のケアの重要な要素である意思決定の共有は、臨床医と患者が治療のベネフィットとリスクに関して、今あるエビデンスを整理し話し合うプロセスであり、最も適切かつ情報に基づいた決定を確実に行うことは患者のためである」と筆頭著者でFlinders University、Clinical Cancer Epidemiology LabのNatansh Modi, NHMRC PhD候補は述べた。

意思決定を共有する過程で2つのツールを使用できる。ひとつはEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)で、医師が判断するツール。もうひとつは患者報告アウトカム(PROs)で患者が身体的、社会的、情動的および機能的能力に関する自らの評価を申告する構造化ツールである。

「PROは一般に臨床試験の二次データとして使用され、結果の解釈に有用である。もっとも近年は、膀胱がん、肺がんおよび皮膚がん等の患者に対する予後の提示において重要であることが分かってきたが、HER2陽性進行乳がんに対する意義はまだ充分解明されていない」とModi氏は述べる。

欧州臨床腫瘍学会議(ESMO)Open誌に発表した通り、同研究では、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陽性乳がんに対して薬物療法を行った患者約3000人を調べた複数試験のデータをプールした。

「身体的ウェルビーイングおよびメンタルヘルスに関する評価項目等、多くの患者報告アウトカムは、がんに関わる全生存、増悪のないがんまたは治療中の重度有害事象のいずれかに関連する重要因子であることが分かった」とModi氏は述べる。

「患者が示した情報は臨床医が判断するスコアより、治療への応答および患者の全体的な予後をうまく予測できることを結果は示している」

「重要なことは、今あるすべての治療アウトカムのなかで、診断決定時に最も有用な患者報告アウトカムは、患者が報告する身体的ウェルビーイングであることが分かった点である」

臨床医中心のデータと患者の自己申告データとでは、結果に大きな差が確認される症例もあることが同研究によって明らかになった。

「『充分活動的で、発症前に制限なく行っていたすべての活動を実行できる』と担当医が判断した患者の約70%が、自己申告のための質問で、身体的ウェルビーイングに制約があるとの報告し続けていたことが分かった」とModi氏は述べる。

有用で独立した予後情報を示す2種類のツールを用いて、患者の考えを聴く重要性を同研究は明確に示している、と著者らは述べた。

「患者が報告する身体的ウェルビーイングは、臨床医が判断したECOG PSより良好に予後を予測できることがこの研究によって示された。そのため、臨床実務を変え、患者の評価と意見を一層重視することが重要である」とModi氏は述べる。

「患者の自己申告による質問票と臨床的に判断する手段を組み合わせることで、我々はがん治療において意思決定の共有を可能にする最良の臨床的知見を提示できるほか、今後の治験デザインを強化することもできよう」

https://ecancer.org/en/news/21877-patient-voices-a-good-predictor-of-cancer-treatment-outcomes

(2022年5月25日公開)

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