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04 Apr 2022
早期に発見されたとしても、他のがんよりも侵攻性が高く、致命的ながんもある。例えば、乳がん全体の10~15%を占めるトリプルネガティブ乳がんなどである。
このがんは、ベルギーでは年間1,000人、世界では225,000人が罹患していると言われている。患者の約半数は、どのような治療を受けても局所再発や転移を起こすと言われている。
この2つの事象を防ぐことができる特定の治療法は今のところない。汎発性トリプルネガティブ乳がん患者の治癒率は、10分の1程度と言われている。
2014年、University of Louvain (UCLouvain) 実験・臨床研究所の研究者であるPierre Sonveaux氏は、マウスでメラノーマ腫瘍の転移の出現を防ぐことが可能だという原理を実証することに成功した。しかし、当時使われた実験用の分子は、医薬品とはほど遠いものだった。
その後、UCLouvainの研究者と博士研究員Tania Capeloa氏を含む研究チームは、具体的にはUCLouvain Foundationから得たスポンサーシップにより研究を続けてきた。
このたび、がん以外の疾患で開発された薬剤「MitoQ」が、ヒト乳がんの転移を80%、局所再発を75%防ぐことをマウスで立証した。逆に、投与しなかったマウスでは、ほとんどはがんが再発し、転移した。
そこで研究者らは、ヒト乳がんを患ったマウスを治療した。つまり、手術と慎重に投与された標準的化学療法のカクテルを組み合わせて治療したのである。
しかし、UCLouvainの研究者らは、この標準的治療法に新しい分子であるMitoQを加えた。彼らは、MitoQの投与が標準的化学療法に適合することを示しただけでなく、この革新的な治療法がマウスにおける乳がんの再発と転移の両方を防ぐことを実証した。
「転移を阻止できると思っていた」とPierre Sonveaux氏は熱っぽく語る。「しかし、がんの再発を防ぐことができたのは全く予想外だった。このような結果を得られたことは、われわれにとって大きなモチベーションになる」
つまり、がん死亡の3大原因は、再発、転移によるがんの広がり、治療への抵抗性であることを考えると、これは大きな一歩と言える。そして、MitoQのような働きをする分子は、今のところ他に知られていない。
どのように作用するのか? がんは、臨床治療に敏感に反応し増殖するがん細胞と、休眠して時間を稼ぐがん細胞の2種類から構成されている。
そのような細胞は、より有害である。問題点は? このがん幹細胞は、臨床治療に抵抗性がある。その結果、転移を引き起こし、不幸にもがんの手術で全てを除去できなければ、再発の原因となる。
このような再発に対しては、現在、化学療法が行われている。しかし、腫瘍細胞が治療抵抗性を獲得しているため、化学療法は比較的効果が低い傾向にある。そこで、UCLouvainの科学者らは、MitoQという分子が、がん幹細胞の目覚めを阻止するという重要な発見をした。
次のステップは? MitoQは、すでに第一臨床段階を順調にクリアしている。健康な男女の患者を対象にした試験で、毒性はわずか(吐き気、嘔吐)であることが証明されている。さらに、その行動パターンもわかっている。
次のステップは? 今回のUCLouvainの研究者らの発見により、がん患者におけるこの新しい治療法の有効性を実証するための臨床第2段階への道が開かれた。
https://ecancer.org/en/news/21681-drug-prevents-human-breast-cancer-recurrence-and-metastasis
(2022年3月18日公開)