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e-cancer:メラノーマ メラノーマ患者の無増悪生存期間の改善ならびに免疫療法への反応性向上との関連性を示す高繊維食

11 Jan 2022

12月23日、Science誌で発表されたテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究では、免疫療法の開始時に食物繊維が豊富な食事を摂取していると申告したメラノーマ患者は、食物繊維を十分に摂取していないという患者に比べ、生存期間が長く、がんの増殖もみられないことが明らかになった。

この効果は、市販のプロバイオティクスサプリメントを服用していなかった患者で特に顕著であった。

この観察所見は、並行して行われた前臨床試験により裏付けられている。

ゲノム医学および外科腫瘍学分野の教授として共同筆頭著者を務めるJennifer Wargo博士は次のように述べている。「我々だけではなく、他の研究グループでも、免疫療法への反応に腸内微生物が影響していることが明らかにされているが、食事とプロバイオティクスサプリメントの役割の研究は十分に行われていなかった。我々の研究は、免疫チェックポイント阻害剤で治療を開始する時点での患者の食事とサプリメントの使用の潜在的影響を明らかにするものである。これらの結果は、食事やその他の戦略を用いてがんの転帰を改善することを目標に、マイクロバイオームを調節する臨床試験をさらに裏付けるものとなる」

この研究で、食物繊維摂取量の閾値を満たしていたのは、果物、野菜、豆類、全粒穀物を比較的多く摂取する患者であった。

食物繊維摂取量が十分な患者37名は無増悪生存期間が長く(中央値に達せず)、それに比べ食物繊維摂取量不十分な患者91名の中央値は13カ月であった。

また、1日の食物繊維摂取量が5g増加するごとに、がんの進行または死亡のリスクが30%低下するという関連性がみられた。

さらに患者を高繊維食か低繊維食か、また市販のプロバイオティクスサプリメントを使用しているか否かで分けたところ、免疫療法への反応が認められたのは、食物繊維の摂取が十分でプロバイオティクスは使用していない患者群では22名中18名(82%)であったのに対し、食物繊維の摂取が不十分またはプロバイオティクスを使用していない患者群では101名中60名(59%)であった。

反応の定義は、完全もしくは部分的な腫瘍の収縮または6ヵ月以上の病態安定とした。

プロバイオティクスの使用のみでは、無増悪生存期間または免疫療法への反応のオッズにおける有意差との関連性が認められなかった。

疫学分野の准教授として共同筆頭著者を務めるCarrie Daniel-MacDougall博士は以下のようにコメントしている。「食物繊維は腸の健康にも重要であるが、健康全般にも重要であり、この2つは非常に密接に関係している。この研究で食物繊維ががん治療にも重要であることが判明した。これは、患者が本当に知りたいことに答える介入研究をデザインする際のポイントとなる。患者が知りたいこととは、今自分が食べているものが重要なのか、そしてそれは自分の治療成績に影響する可能性があるのかという点である。その答えを見つけるべく、我々は一丸となって研究に取り組んでいる」

この研究は、メラノーマ患者438名の腸内微生物プロファイルの分析から始まった。このうち321名は病期の進行した患者で全身療法を受けており、うち293名が追跡調査中に評価可能となる治療への反応を示した。

これらの患者の大多数(87%)には、最も一般的なPD-1阻害剤である免疫チェックポイント阻害剤が投与されていた。

抗生物質とプロバイオティクスの使用に関する生活習慣の調査には計158名の患者が回答しておりており、このうち128名が免疫チェックポイント療法を開始するにあたり食事に関する質問票に回答した。

研究グループは、免疫療法に反応を示す患者では、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)およびフェカリバクテリウム・プラウスニツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)という、食物繊維またはデンプンの消化に関与し有益性があることでよく知られている細菌が比較的豊富であることを示し、これは先行研究結果を補強するものであった。

これまでの所見とは対照的に、腸内細菌の全般的な多様性には免疫療法への反応との関係性がみられなかったが、これはこの患者のコホートの規模が大きかったためである。

また、研究者らは、前臨床のメラノーマの複数モデルで、高繊維食を摂取する場合と低繊維食にプロバイオティクスを使用した場合とを比較して検証し、患者コホートから得た観察所見の背景にある潜在的なメカニズムを解明した。

プロバイオティクスの使用は、複数のモデルにおいて、免疫チェックポイント阻害剤への反応性の低下、腫瘍の拡大、腸内細菌叢の多様性の低下、腫瘍微小環境における細胞障害性T細胞の減少との関連性を示した。

PD-1阻害薬を投与された前臨床モデルでは、高繊維食は、腫瘍増殖が緩徐であることやCD4+ T細胞の頻度が高いことと関連していた。

メラノーマの腫瘍内科分野の准教授および医師として共同筆頭著者を務めるJennifer McQuade博士は、初期の研究結果をもとに無作為化臨床試験を実施する。この試験では、食物繊維の含有量がさまざまな自然食品をベースとした食事でマイクロバイオームと免疫反応にどのように影響するかを検討する予定である。

この試験は現在、病期III~IV期で免疫療法を受けているメラノーマ患者を登録している段階である。

「我々の研究グループは、マイクロバイオームを改変することによりがん治療を変革するという目的のもと、MDアンダーソンの革新的マイクロバイオームおよびトランスレーショナルリサーチプログラム(PRIME-TR)とバイオニュートリション・リサーチ・コア(Bionutrition Research Core)の一環として協同で研究に取り組んでいる。我々の研究に参加してくれた患者さんやご家族の方々には大変感謝している。最終的には、患者自身が食事管理を行ってがんに対するオッズを改善できるように、エビデンスベースの指針をこの研究で示せたらと思っている」とWargo博士は述べている。

https://ecancer.org/en/news/21429-high-fibre-diet-associated-with-improved-progression-free-survival-and-response-to-immunotherapy-in-melanoma-patients

(2021年12月23日公開)

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