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10 Dec 2021
米国がん協会および国際がん研究機関によると、2020年に世界で前立腺がんと診断された男性は140万人と推定されている。前立腺がんと新たに診断されたこれらの男性は、うつ病や不安神経症の発症率が約30%、心臓発作のリスクが4倍、自殺のリスクが2倍になる。
ヨガは、呼吸法やマインドフルネスと組み合わせた特定の体位をとるもので、このようなストレスの多い状況でも簡単に実践できる可能性があることが、Prostate Cancer and Prostatic Diseases誌に掲載された研究で明らかになった。
UT Health San Antonio MD Anderson Cancer Centerの本拠地であるMays Cancer Centerの泌尿器科の研究者らによる試験的な無作為化臨床試験では、前立腺摘出手術を控えた男性29人が登録された。
14人をヨガ参加群、15人を手術を待つだけの標準治療群に無作為に割り付けた。
「積極的に介入したグループには、週に2回以上、60~75分間のヨガを6週間続けてもらった」と、UT Health San Antonio’s Joe R. and Teresa Lozano School of Medicine泌尿器科准教授で、Mays Cancer Centerのがん専門外科医でもある筆頭著者のDr. Dharam Kaushikは述べた。
研究チームは、ヨガの開始時、手術時、手術後の男性のQOLをアンケートで記録した。ヨガをしなかった男性は、研究登録時と他の2つの時点で同じアンケートに回答した。
研究チームは、男性がヨガを始める前と、すべてのセッションが終了した後に、血液検体を採取した。また、ヨガをしていない男性からも血液を採取した。
幸福感について
「非常に興味深い結果が得られた」とDr. Kaushikは述べた。「ヨガは、標準治療と比較して、男性の生活の質を改善した。特に、疲労尺度による計測において疲れにくさ、性的機能、機能的・身体的・社会的な幸福感が改善された」
さらに、ヨガ実施群では、より強い免疫応答と炎症レベルの低下が観察されたと彼は付け加えた。
Dr. Kaushikは、「本知見は有望なデータであり、さらなる大規模研究が必要であるが、今回のパイロット研究はそのモデルとなるだろう」と述べた。
バイオマーカーとヨガ
主要評価項目は、質問票によって評価された自己申告のQOLであった。ヨガによる免疫細胞の状態や炎症マーカーの変化は副次評価項目であった。
ヨガ実施群では、免疫の健康に重要な役割を果たす循環CD4+およびCD8+ T細胞数が増加した。また、その他のマーカーでは、サイトカインと呼ばれる炎症マーカーの減少もみられた。
参加者の年齢の中央値は、ヨガ実施群が56歳、標準治療群が60歳であった。
ヨガは乳がんでも研究されているが、自己申告のQOLデータと免疫応答や炎症マーカーを照合するという、今回の研究のような詳細なレベルではなかったと、Dr. Kaushikは述べている。
「大きな効果が期待できて、安価で簡単にできる小さな介入を患者さんに勧められるのであれば、それに越したことはない」と彼は述べている。
(2021年11月24日公開)