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09 Dec 2021
本研究は、Zhejiang UniversityのCollege of Pharmaceutical Sciences教授のZhen Gu博士とUnivesity of North CarolinaのChapel Hill校微生物免疫学科のGianpietro Dotti博士が主導している。CAR T細胞療法は、白血病治療での実績から、がん治療への期待が高まっている。
一方、固形がんに対するCAR T細胞を用いた臨床評価は、血液悪性腫瘍に対するものよりも劣っている。固形腫瘍は、CAR T療法の抗腫瘍効果を阻害する独特の微小環境を有している。高密度の細胞外マトリックス、異常な血管構造、間質液圧などが、CAR Tの固形腫瘍への侵入を阻む物理的バリアとなっている。「固形腫瘍に対するCAR T療法では、物理的な障壁を破ることが重要なポイントである」とZhen Gu氏は述べる。
研究者らは、固形腫瘍にin situで適用するためにCAR T細胞を収容する多孔性微小針を開発した。研究チームは微小針の機械的強度を評価し、この多孔性微小針が、1本の針の先端に約2万個のCAR T細胞を搭載しながら、腫瘍のマトリックスに容易に挿入することができることを示した。
「微小針ベースのCAR T細胞を固形腫瘍に播種するには、十分な機械的強度と負荷能力が必要である」 と、本研究の共同筆頭著者で、Zhejiang University薬学部教授のHongjun Li氏は述べている。
研究チームは、多孔性微小針にCAR T細胞を搭載した場合、その殺傷能力および増殖能力は、中培養細胞に匹敵することを発見した。「細胞送達に関する重要な課題は、その本来の機能および活性の破壊を回避することであるため、これは重要である」と、本研究の共同筆頭著者であり、UCLAバイオエンジニアリング学部の博士研究員であるZejun Wang氏は述べている。
研究者らはまた、異種移植ヒトメラノーママウスモデルの固形腫瘍におけるCAR T細胞の分布についても検討した。腫瘍内注射で適用部位の周囲に限定して分布させた場合と比較して、多孔性微小針パッチを介して送達されたCAR T細胞は、より顕著な腫瘍への浸潤結果を示し、CAR Tががん細胞に遭遇し、その活性化と殺傷を開始する機会を増やすことができた。
Gianpietro Dotti氏は、「腫瘍への浸潤が強化されたことで、CAR T細胞のメラノーマにおける増幅は、微小針を用いた送達によって著しく改善された」と述べている。
さらに、多孔性微小針を用いたCAR T細胞の送達戦略は、ヒトメラノーマモデルおよび同所性ヒト膵臓腫瘍モデルにおいて、抗固形腫瘍活性も実証した。腫瘍の抗固形化に加えて、この微小針を用いた生細胞送達は、他の疾患の治療にも応用できる可能性がある。
(2021年12月3日公開)