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30 Nov 2021
中国北部では、食道胃接合部がん(噴門部がん)の発生率が高く、西欧諸国と比較して明確な特徴を持っている。
Uppsala Universityの研究グループは中国の研究者と共同で、ERBB2遺伝子の多くの重複遺伝子の存在が噴門部がんの良好な予後と関連している可能性があることを見出した。
遺伝的変化は、地域的な食習慣に起因する可能性がある。
がんは一般的に染色体の外側にあるDNAなど、さまざまな遺伝的変化に関連している。
この染色体外DNAには、特定領域の高度な遺伝子増幅(focal amplification)によって増幅された遺伝子が含まれている可能性がある。
Nature Communications誌に掲載された研究で研究者らは、染色体外DNAとfocal amplificationが中国人の噴門部がん患者のグループでよくみられることを発見した。「噴門部がんの発生率が高い中国中北部の太行山脈に居住する患者から得た標本を調査した」
本研究のスウェーデン部門の調査を率いており、Uppsala Universityの免疫・遺伝・病理学部の研究者であるXingqi Chen氏は次のように述べた。「我々が検出した染色体外DNAとfocal amplificationは、この地域の食物に含まれるニトロソアミンによって引き起こされるDNAの高度損傷が原因となっている可能性がある」
増幅されたDNAの遺伝子を調べた結果、特定の遺伝子と患者の予後との間に相関関係があることが分かった。EGFR遺伝子のfocal amplificationは予後不良と相関していたが、ERBB2遺伝子のfocal amplificationは予後良好と関連していた。研究者らはERBB2遺伝子によってコードされるタンパク質と予後との相関関係を調査し、生存率がERBB2遺伝子のタンパク質レベルに依存することを発見した。
「生存期間が2年未満の場合、ERBB2遺伝子を有する患者はERBB2遺伝子のない患者よりも生存率が低かった。しかし生存期間が2年より長い場合は反対の傾向が示された。つまり、ERBB2タンパク質の患者は生存率が高かった。ERBB2遺伝子のfocal amplificationは、生存期間が長い噴門部がん患者の良好な予後マーカーとなる可能性があることを本知見は示している」とXingqi Chen氏は述べた。
(2021年11月15日公開)