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24 Nov 2021
免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍細胞に対する免疫系の反応を高める効果があるが、特定のがん、とくに大腸がんや膵臓がんには効果がない傾向がある。
Massachusetts General Hospital (MGH) の研究者らが主導した新しい臨床試験は、放射線と免疫チェックポイント阻害剤の併用がこれらの抵抗性がんと闘う効果的な戦略である可能性を示している。
前臨床研究では、低線量放射線は、抵抗性のがんにおいて標的が異なる免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブおよびイピリムマブで刺激されると免疫反応を誘発する 「腫瘍ワクチン」 環境を作り出すことが示されている。
Nature Cancer誌に報告されているように、研究者らはこの戦略を、結腸直腸がん患者40名および膵臓がん患者25名を対象とした単群第II相試験で検証した。
放射線+ニボルマブ+イピリムマブの予定された治療を受けた患者において、大腸がん患者の37%、膵臓がん患者の29%が治療に対する奏効(完全奏効または部分奏効、または病状が進行しない安定した状態)を示した。
MGH Cancer Centerのイノベーション担当アソシエイト・クリニカル・ディレクターであり、Harvard Medical Schoolの医学准教授でもあるDavid T. Ting医学博士は、「これまで、これらのがんの治療効果は一桁台前半であったことを考えると、今回の結果は非常に素晴らしいものである」と述べている。さらに、放射線治療と免疫療法を併用するタイミングを改善することで、有効性が高まる可能性があるという新たな情報が得られたため、今後の調査が必要であると付け加えた。
また、治療前に採取したがん生検を分析したところ、3剤併用療法が奏効した腫瘍では、ヒトゲノムに正常に存在する特定のウイルス配列の発現が高い傾向にあることがわかったという。
これらの配列はHERV-Kと呼ばれるレトロウイルスに属する。
「HERV-Kは、この免疫療法レジメンに対する反応の潜在的なマーカーとなる可能性があり、個々の患者に合わせて治療を調整するための将来の研究に使用することができる」と、Ting氏は述べる。
また、これらのウイルス配列ががん生物学に果たす役割についての研究も必要である。
(2021年11月19日公開)