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e-cancer:がん全般 研究者らは細胞内の精度により目的の腫瘍を設定

02 Nov 2021

マサチューセッツ大学アマースト校が開発した非毒性の細菌ベースのシステムは、がん細胞内への到達を検知したうえで治療薬のペイロードを細胞内に直接運び込むことを可能にした。

Nature Communications誌に発表されたこの研究は、肝臓がんや転移性乳がんなど、現在治療不能とされているがんに有効な標的治療につながる可能性がある。

研究者らはこれまで、固形腫瘍の細胞膜の透過に成功したことがなかったため、決定的ながんのパスウェイを効率的に標的化することができなかった。

薬物送達の現在の方法には、ナノ粒子、細胞膜透過ペプチド、抗体薬物複合体などがあるが、細胞内に進入する能力が乏しく、特定の標的がん細胞に到達できず、外部から侵入した異物から守るために細胞に自然に備わる防御力の低下の影響を受けやすいため、有効性が限られている。

マサチューセッツ大学アマースト校の今回の革新的な研究は、細胞内への進入が容易になるだけではなく、正常な細胞を残したまま特定のがん細胞を標的としてタンパク質(薬物)を直接送達させることができることを試験で証明した。

また、そのタンパク質のペイロードが送達されると、細菌はきれいに消散する。

化学工学者で、この研究を実際に行った研究室のあるInstitute for Applied Life ScienceのNeil Forbes氏は次のようにコメントしている。「腫瘍の[タンパク質]を実際に検出することはできるが、マウスモデルの肝臓と脾臓でそれを検出することはできない。これは腫瘍のみに送達するもので、免疫応答や肝障害に注目しても、生理食塩水との差異はみられなかった」

この送達システムは、生体工学を専門としForbes氏の研究室で今回の論文の共同筆頭著者を務めるポスドク研究員のNele Van Dessel氏が開発した。

これは、高度に修飾されたタイプのサルモネラ菌を血流に注入して使用する。

サルモネラ菌が腫瘍に蓄積することは知られているが、がん細胞に侵入することは知られていなかった。

Van Dessel氏のシステムでは、この細胞浸透力を正確に測定できる。改変されたサルモネラ菌が細胞膜を破って通過すると、緑色に変わるからである。

Forbes氏によると、「がん細胞内のサルモネラ菌を実際に示した人はいない」

使用するタンパク質は、化学および分子・細胞生態学を専門とするJeanne Hardy氏と開発した。この研究を主導したのは、Van Dessel氏と化学工学を専門としこの論文の共同筆頭著者を務めるVishnu Raman氏であった。

前臨床の段階ではあるが、マウスでの試験結果は非常に将来性があり、特に、世界で年間840,000人が肝がんの診断を受けている中で最も多くみられるタイプの肝細胞がんの場合に有望であった。

現在、肝がんの治療に利用できる薬剤はほとんどない。

Forbes氏は自身の研究室での研究について、「肝がんについては、抗腫瘍作用があるという前臨床のエビデンスに我々は注目している。まだ研究初期の段階で、ごく一部のマウスに限られるが、この治療法を利用して腫瘍を抑制する状態を今のところ維持できている。

治療不能のがんは有効な治療法が全くないからこそ、開発されれば特に喜ばしいことになると述べるVan Dessel氏は、家族のうち2名が2016年にステージ4の固形がんと診断され、「自分が無力だと感じた。私はがんの検査の博士号を取得して10年間研究をしていたのに、家族を救うことができなかった。彼らの期待を裏切ったような思いにかられたし、自分の努力が足りなかったと感じた」と語る。

このことが原動力となって、彼女はForbes氏とともに、細菌によるがん治療の技術を医療現場で利用できるようにすることを目標に、Ernest Pharmaceuticals社を創設した。今後もFDAの臨床試験の承認を求めて探究していく。

社名は、前立腺がんで亡くなったForbes氏の祖父にちなんで命名された。

Van Dessel氏は「2~3年以内に臨床現場で利用できるようになることを願っている。また、Ernest社では、肝がんや乳がんでの研究だけではなく、現在の免疫療法やその他の治療法では大きな効果が得られない卵巣や膵臓の腫瘍にも力を入れている」とコメントしている。

https://ecancer.org/en/news/21143-researchers-target-tumours-with-intracellular-precision

(2021年10月22日公開)

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