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14 Sep 2021
抗生物質の服用と、今後5~10年以内に結腸がんを発症するリスクの増加には明確な関連性がある。
これは40,000件のがん症例研究の結果、スウェーデンのUmeå Universityの研究者らによって確認された。
本研究結果は、JNCI Journal of the National Cancer Institute誌に掲載された。
腸内微生物叢に対する抗生物質の影響は、がんのリスク増加の背後に存在していると考えられている。
「この結果は、抗生物質を制限する理由が多数存在しているという事実を強調している。多くの場合、抗生物質療法は必要であり救命を担うが、治癒を目的としたそれほど深刻ではない疾病の場合には、注意を払う必要がある。とりわけ、耐性菌が増えるのを防ぐためであるが、本研究が示すように、抗生物質が将来の結腸がんのリスクを高める可能性があるためである」とUmeå Universityのがん研究者であるSophia Harlid氏は説明する。
抗生物質を6ヵ月以上服用した女性および男性ともに、抗生物質を服用していない人よりも、小腸の後に食物が到達する結腸の最初の部分である上行結腸で、がんを発症するリスクが17%高いことを研究者らは見出した。
しかし、下行結腸がんのリスクの増加は見られなかった。
また、抗生物質を服用している男性では直腸がんのリスクは増加していなかったが、抗生物質を服用している女性では直腸がんの発生率がわずかに低下していた。
結腸がんのリスクの増加は、抗生物質を服用してから5〜10年後に見られた。
リスクの増加は、ほとんどの抗生物質の服用者にとって最大であったが、抗生物質の単回投与後のがんのリスクがわずかだが統計的に有意な増加を観察することもあった。
本研究では、2010~2016年までのスウェーデンの大腸がんレジストリーからの40,000人の患者に関するデータを使用している。
これらは、スウェーデンの全人口から抽出された20万人のがんを有さないマッチさせた対照群と比較された。
個人の抗生物質使用に関するデータは、2005~2016年の期間にスウェーデンの処方薬レジストリーから収集された。
スウェーデンの研究は、以前のやや小規模な英国での研究の結果を概ね裏付けている。
抗生物質がどのようにリスクを高めるかを理解するために、研究者らは、微生物叢に影響を与えない尿路感染症に対して使用される非抗生物質の殺菌薬について研究した。
この薬剤を使用した人の結腸がん発症の頻度に差はなく、がんのリスクを高めるのは微生物叢に対する抗生物質の影響であることを示唆している。
本研究は経口投与された抗生物質のみを対象としているが、静脈内投与の抗生物質でさえ腸内細菌叢に影響を与える可能性がある。
「抗生物質を服用したからといって、警告するには当たらない。リスクの増加は中程度であり、個人への絶対リスクへの影響はかなり小さい。スウェーデンはまた、大腸がんの定期的なスクリーニングを導入する過程にある。他のスクリーニングプログラムと同様に、がんの前駆細胞を除去できる場合もあるため、早期に検出し、予防できるようにすることが重要である」とHarlid氏は述べている。
https://ecancer.org/en/news/20844-antibiotics-increase-the-risk-of-colon-cancer
(2021年9月2日公開)