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03 Aug 2021
一部の抗生物質は、メラノーマとして知られる皮膚がんの一種に対して効果的と思われる。
このような抗生物質の効果を、ベルギーのKU Leuvenの研究チームがマウスで患者由来腫瘍を用いて検討した。
この調査結果は、Journal of Experimental Medicine誌上で発表された。
KU Leuvenの研究チームは、メラノーマとの闘いにおいて新たな武器を発見した可能性がある―それはがん細胞の「発電所」をターゲットとする抗生物質である。
これらの抗生物質は、がん治療後も生き残ろうとする腫瘍細胞で生じる脆弱性を利用する。
「がんが進行するにつれて、一部のメラノーマ細胞は治療作用から免れたり、免疫系から”隠れる”ために増殖を停止したりすることがある。これらは後期段階で新たな腫瘤を形成する可能性をもつ細胞である」とKU Leuvenのがん研究者兼RNA生物学者のEleonora Leucci氏は説明する。
「ただし、それらの不活性細胞ががん治療後も生き残るためには、その”発電所”であるミトコンドリアのスイッチをいつでもオンに切り替えられるようにする必要がある。 ミトコンドリアは、経時的に細胞内に生息し始めた細菌から生じることから、特定の種類の抗生物質に対して非常に脆弱である。このことから、メラノーマの治療薬としてこれらの抗生物質を利用するという発想が生まれた」
研究チームはマウスに患者由来の腫瘍を移植後、抗生物質単独または既存の抗メラノーマ療法との併用による治療を行った。Leucci氏:「抗生物質は多数のがん細胞を迅速に死滅させることから、免疫療法を本格的に活用するために必要な貴重な時間を稼ぐために利用されることがあった。標的治療にはもはや反応しなくなった腫瘍では、抗生物質がマウスの寿命を延ばし、場合によっては治療さえしていた」
抗生物質は現在、抗生物質耐性の上昇を理由に、細菌感染症ではごくまれにしか使用されない。
ただし、この耐性は今回の研究で治療法の有効性に一切影響を及ぼすものではないとして、Leucci氏は次のように説明している。「がん細胞はこれらの抗生物質に高感度を示すことから、我々は現在、細菌感染症ではなくがん治療を目的にこれらを役立てようと注目している」
ただし、メラノーマ患者での実験を開始すべきではないとLeucci氏は警鐘を鳴らす。「我々の所見はマウスでの研究に基づいたものであるため、この治療法がヒトでどれほど効果的であるのかについては把握していない。我々の研究で取り上げているのは、細菌感染を治療するために抗生物質を投与されたメラノーマ患者の1例のみで、これは標準療法に耐性を示すメラノーマ病変の感度を再度高めるものあった。このような結果は楽観論の根拠となるが、がん患者を治療する目的での抗生物質の使用を検討するためには、さらに多くの研究や臨床試験を行う必要がある。現在、我々の選択肢をKU Leuven / UZ Leuvenの腫瘍学者であり本研究の共著者でもあるOliver Bechter氏が調査しているところである」
https://ecancer.org/en/news/20673-antibiotics-may-help-to-treat-melanoma
(2021年7月23日公開)