ニュース
13 Jul 2021
マウスおよびがんで死亡した患者の臓器を用いた新たな研究によると、予後不良で知られるトリプルネガティブ乳がんに由来する転移性腫瘍は、肺に発生した場合は肝臓で発生した場合よりも多様ながん細胞が含まれるという。
この研究では、肺転移と肝転移を区別する一連の遺伝子も特定された。同時に、標的療法がさまざまな微小環境全体を通して腫瘍に与える影響に関して、今後の研究に有用な情報を提供する可能性がある。
同一の腫瘍内部に異なる腫瘍細胞集団が存在すると乳がんの進行が促進されることはすでに知られているが、この有害性の高い細胞多様性が一部の腫瘍内で発生し、他の腫瘍では発生しない理由は完全には解明されていない。
Jean Bertheletらは、腫瘍転移が宿主組織の種類によってどのように変化するかを検討するため、新しい光学バーコード手法を最適化し、31のトリプルネガティブ乳がんサブクローン(がん細胞由来のサブポピュレーション)を分析した。
研究者らは、蛍光標識を加えた細胞をがんマウスの乳腺脂肪組織に注入し、トリプルネガティブ乳がん細胞が転移傾向を示した肺と肝臓に転移した何千ものクローン細胞の構成をマッピングした。
研究者らは、肺への転移では炎症性腫瘍壊死因子α(TNF-α)経路が肝臓への転移に比べ特に亢進されており、この経路の複数の遺伝子が肺への転移を促進している可能性があることを発見した。
Bertheletらはまた、乳がん患者3名の病理解剖検体から肺転移巣4個と肝転移巣7個を収集し、彼らが特定した遺伝子がヒトの肺と肝臓の間でも異なって発現していることを立証した。
(2021年7月7日公開)