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e-cancer:血液がん がん遺伝子を探す研究者が採用する「情報理論」

06 May 2021

Johns Hopkins MedicineとJohns Hopkins Kimmel Cancer Centerの研究者らは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を発症させる主要な遺伝学的原因となり得るものを発見したと報告した。その際、本研究チームが採用したのは、情報のデジタル化やその他の形式を評価し、保存して共有する方法を研究することを主な目的として考案されたことで広く知られている数学のある分野であった。

ALLは小児白血病で最も多く、米国だけでも毎年約3,000人の小児や10代の患者が新たに罹患している。

Johns Hopkins大学のこの研究チームが特別に採用したのは、0と1の文字列に依拠する分析を適用する「情報理論」(コンピュータ言語およびコードに共通する記号のバイナリシステム)で、特定のプロセスの変数またはアウトカムを識別する。

研究者らは、ヒトの腫瘍生物学の例で、DNAメチル化という細胞での化学的なプロセスに注目した。このプロセスでは、遺伝子のスイッチのオン/オフを先導する遺伝子の領域と特定の化学物質のグループが関連している。

「この研究は、細胞がどのように反応すると想定され、またその反応の変化が健康にどのような影響をもたらすかという点をがんの数学的言語によって理解しやすくする方法を実証するものである」とJohns Hopkins大学医学部Bloomberg特別教授のAndrew Feinberg, M.D., M.P.H.は語る。

Feinberg氏は、がんのエピジェネティクス分野の創始者であり、1980年代にはがんにおけるDNAメチル化の変化を発見した。

同氏の研究チームによると、がんのドライバー遺伝子を探す際に情報理論を使用する方法は、多種多様ながんやその他の疾患に適用できる可能性がある。

メチル化については現在、細胞の遺伝子コードを変えることのない一方向性のDNAの変化として認識されている。メチル化がそのようなエピジェネティクスな現象で誤った方向に進むと、特定の遺伝子のスイッチが異常にオンまたはオフにされ、コントロール不良の細胞増殖、つまりがんを誘発する。

「DNAの遺伝子変化、すなわちDNAの塩基配列を変える変異は、ほとんどの人においてごく普通にみられる。

そのような変異とは、一つの文章を作り上げる単語のようなものであり、またメチル化とは、文章に置かれる句読点のようなもので、読むときに一呼吸置いたり一旦止まったりする場所を示すものである」とFeinberg氏は語る。

同氏は、Johns Hopkins大学で電子・コンピューターエンジニアリング部教授を務めるJohn Goutsias, Ph.D.や小児腫瘍医でありJohns Hopkins大学Kimmel Cancer Centerで腫瘍学准教授を務めるMichael Koldobskiy, M.D., Ph.D.とともに、DNAメチル化によって変化したエピジェネティクスコードを読み取って理解するための効率的な新しい方法を求めて研究を進めた。

Koldobskiy氏は「遺伝子コードが突然変異しない場合でも、この情報を利用してがんの発生を引き起こす遺伝子を特定しようとした」と述べている。

本研究の成果については、Feinberg氏、Koldobskiy氏、Goutsias氏がNature Biomedical Engineering.誌上で発表した。

Koldobskiy氏は、特定の遺伝子座決定におけるメチル化はバイナリーメチル化または非メチル化であり、コンピュータのコードや指示を表すために使用する場合と同様に、0と1のシステムでその差を表すと説明している。

今回の研究で、Johns Hopkins大学の研究チームは、Johns Hopkins病院およびテキサス小児病院で新たにALLと診断された小児31例の骨髄サンプルから抽出したDNAを解析した。

同チームはDNAの配列を決定し、ゲノム全体でどの遺伝子がメチル化され、どの遺伝子がメチル化されていないのかを特定した。

新たに白血病と診断された患者は、体内に数十億の白血病細胞が認められるとKoldobskiy氏は語る。

同チームは、メチル化された遺伝子コードとメチル化されていない遺伝子コードに0と1を割り当て、情報理論とコンピュータープログラムの概念を利用してメチル化のパターンを認識することで、白血病患者と非がん患者において一貫してメチル化されたゲノムの領域を見出すことに成功した。

また、正常な細胞よりも白血病細胞に特に関連するスポットを研究者に知らせるシグナルとして、正常なゲノムに比べてランダムにメチル化された白血病細胞でのゲノム領域にも注目した。

正常なゲノムに比べて、DNAメチル化に差異がみられる白血病細胞内では、他の遺伝子領域でUHRF1と呼ばれる遺伝子が目立った。

Feinberg氏によれば、「この遺伝子は、前立腺がんやその他のがんとの関連性が示唆されているが、これまで白血病のドライバーとして認識されることがなかったことから、これを見い出したことは非常に驚くべきこと」だと述べている。

正常細胞の場合、UHRF1遺伝子のタンパク質産物は、DNAメチル化とDNAのパッケージングとの生化学的な橋渡し役となるが、遺伝子の変化がいかにしてがんの一因となるのかを研究者が厳密に解読したことはこれまでなかった。

Johns Hopkins大学の研究チームによる実験から明らかになったことは、ラボで培養されUHRF1遺伝子の活性がみられない白血病細胞は、さらに白血病細胞を自己複製し永続させることができないという点である。

「白血病細胞は生き残りを目指すものであり、確実に生き残るための最善の方法とは多くのゲノム領域でエピジェネティクスを変えることであることから、がんを死滅させようとどのような試みを行っても、少なくとも一部は生き残ることになる」とKoldobskiy氏は説明する。

ALLは最も多くみられる小児がんであり、Koldobskiy氏によれば、数十年にわたるさまざまな治療法の研究とその治療法の積み重ねこそ、このような白血病を治療する臨床医にとって何よりも有用であったが、疾患の再発は依然として小児のがんの主要な死因となっている。

「今回の新たなアプローチによって、白血病をはじめ、その他のさまざまな形態のがんを引き起こす可能性の高い変化をターゲットに、これまでよりも合理的な方法にたどりつけるかもしれない」とKoldobskiy氏は期待を込める。

Johns Hopkins大学の研究チームは今後、他のがんでメチル化のパターンを解析する場合にも、情報理論を使用していく。さらに、小児白血病患者の治療抵抗性や病勢進行にURFH1のエピジェネティック変化が関連するか否かについても同定する予定である。

https://ecancer.org/en/news/20148-information-theory-recruited-to-help-scientists-find-cancer-genes

(2021年4月21日公開)

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