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07 Apr 2021
がん患者は通常、一般の人々よりも血栓症のリスクが高い。
このリスクは、患者固有の要因とがん自体の影響によって高まる一方、手術や放射線療法、あるいは特定の化学療法などのがん治療の影響によっても高まる可能性がある。
過去数年間で、免疫チェックポイント阻害剤は、さまざまな種類のがん治療に使用されるようになってきている。
これらの薬剤は、腫瘍に対する免疫系を活性化することにより、メラノーマ、肺がん、腎細胞がん、その他の種類のがん患者の予後を改善する。
「免疫チェックポイント阻害剤で治療されている患者は、以前にがん治療を受けたことがあることが多く、ほとんどの場合、進行がんである。したがって、血栓塞栓症の重大なリスクが予想される可能性があるが、これまでのところ、免疫チェックポイント阻害剤に対して実施された大規模な治療研究ではこの問題は報告されていない」と、Florian Moik氏と同じくMedUni ViennaおよびVienna General Hospitalの総合がんセンター(CCC)に所属する主任研究員のCihan Ay氏は述べた。
こうした情報不足を補完するため、2015~2018年にMedUni Vienna/Vienna General Hospitalで免疫チェックポイント阻害剤で治療された患者の静脈および動脈血栓塞栓症に関するデータを収集するコホート研究が開始された。
本研究には平均8.5ヶ月の治療を受けた合計672人の患者が登録された。
結果
「静脈血栓塞栓症の累積発生率は12.9%で、動脈血栓症の累積発生率は1.8%だった。サブグループ別の解析でも同様の血栓症発生率が観察されたため、このリスクは基礎にあるがん種や投与した免疫チェックポイント阻害剤の種類とは無関係と考えられる」とFlorian Moik氏は述べた。
静脈血栓塞栓症の発症は、予後不良および腫瘍進行までの期間の短縮と関連していた。
さらに、それらはしばしば治療の遅延または中止にもつながり、抗凝固治療中の再発性血栓症および出血の重大なリスクと関連していた。
「本結果は、がん患者の臨床経過に対する静脈および動脈血栓塞栓症の悪影響をはっきりと示している」と研究著者のMoik氏は要約で述べている。「本研究では、観察された血栓塞栓症の高いリスクが免疫チェックポイント阻害療法と因果関係にあるのか、それともこの患者集団が有する根本的なリスクを反映しているだけなのかを判断できない」
とはいえ、特にこの新しいがん治療の高い有効性を考慮して、これらの合併症に対する認識を高めることが重要である。
「したがってこの論文は、特に静脈血栓塞栓症を予防するために、血栓症予防のベネフィットが得られる可能性のある患者を特定するためのさらなる研究の基礎となるだろう」とMoik氏は述べた。
本研究はBlood誌に掲載された。
https://ecancer.org/en/news/19979-high-thrombotic-risk-in-cancer-patients-receiving-immunotherapy
(2021年4月1日公開)